アメリカの若い人たちを表す言葉に「ミレニアルズ」というものがある。
これは、1985〜90年代に生まれ、2000年以降に成人となった、現在の20〜35歳くらいの人たちを指すらしい。
現在のアメリカの人口は役3億人で、なんとその1/4を占める。
やっぱりアメリカは若い国だ。
その人たちがちょうど大人になった頃に、アメリカはリーマンショックをはじめとする不況を経験した。
その影響をもろに受けた世代だ。
今のアメリカの若い人たちにとっては、「アメリカンドリーム」が失われ、その象徴であるクルマと家を持たない人が増えているらしい。
記事によると、22〜24歳のミレニアルズ世代は77%しか運転免許を持っていない。
あの広いアメリカで、クルマを持たないという選択。ちょっとびっくりした。
1983年には22〜24歳の93%が免許を持っていたが、2008年に82%に減って、2014年に77%になった。
いずれ生活のために持つのかもしれないが、この減り方はスゴイ。
実際にクルマを持っている若者(詳細の年齢は不明)が2007年に77%で、それが2011年に66%に減っている。
同時に家を持っている若い人も40%から33%に下がっているらしい。
最大の理由はお金がないことだという。
アメリカの大学はお金がかかり、アメリカでは18歳を超えたら親は面倒をみないのが一般的だから、ミレニアルズの人たちの9割が日本円で400万から500万円の借金を返しているのが現状とのこと。
それじゃあ、クルマは買えない。
卒業と同時にクラウンを頭金なしのローンで買ったようなものだ。
またお金がないから、結婚が遅れ、家を持たない。
ミレニアルズの結婚率はたった26%らしい。
アメリカの団塊の世代であるベビーブーマーが46%、1960年代〜70年代生まれのジェネレーションXが36%だったから、約50年で下がり続け、約半分になったということだ。
ミレニアルズが経済格差の是正を全面に押し出した、民主党の左派のサンダースを応援した理由はここにあるんだろう。
今の権力の中枢にいて、格差の上の方にいるヒラリーには反感を持っているのだ。
ただ、クルマや家が欲しくても買えない、ということだけではないという。
それに変わる価値観が出てきたということらしい。
ミレニアルズはスチューデントローンで苦しんでおり、そのせいで卒業して親の家に戻る事が多い。
親との同居は「恥ずかしい」という感覚はなくなってきているからだ。
ぼくの見ているアメリカのドラマでも、大学を出て家に帰ってきている娘や息子が出てくる。
そういう時代なのだ。
そして、スマホが出てきた。
ミレニアルズの85%がスマホを持っており、過去5年間に3回機種を変えている人が6割。
5年間にスマホにかけたお金は1人平均で1593ドル(通信費は入らない)。
そして、7割の人が常に最新機種に交換するプログラムに入っているということだ。
スマホがあれば、顔を見ながらチャットもできるし、離れていてもオンラインゲームができる。
テクノロジーがクルマで移動する距離をなくしたということか。
だから、親の車をたまに借りるので十分らしい。
Uberという安いシェアリングサービスもあるからなあ。
70年代のアメリカンドリームというと、郊外の大きな家に住み、アメ車に乗ってショッピングモールに行く、というようなものだったが、ミレニアルズは違う。
郊外などには住みたくない。
便利な都会がいいのだ。
記事には「レストランやスーパーマーケットも歩いて行ける距離にある、友だちも近所に住んでいる、そんな都市型のライフスタイルを望んでいるのです。一方で全米の地方都市の再開発が進み、郊外よりも都市のコミュニティのほうが成長する現象は1920年代以来とも言われています。都市なら公共交通機関が整備されているから車は必要ない、また住まいも自然とレンタルのアパートが多くなります。その結果レンタルマーケットが活況を呈し、家賃も上がっています。」とある。
日本でも同じような感じだ。
若者のクルマ離れが起こっている。
昔ならなけなしのお金で頭金を作り、車を買っていた層が今はスマホの通信費でローンなど組めない。
もともと都会にいて、クルマが必要ないという考えもある。
ミレニアルズの時期は日本でもバブルが崩壊し、不景気だった。
アメリカと日本が連動しているのがよくわかる。
ミレニアルズが2011年に「ウォール街を占拠せよ」というムーブメントを起こした。
1%の富裕層がアメリカを牛耳っているということに対する抗議行動だった。
それ自体は勢いを失ったが、それらの若者は今回のサンダース支持に動いた。
サンダースは民主党の大統領候補を降りたが、ヒラリーも無視はできない。
それだけミレニアルズの声は大きいのだ。
日本も高齢化に伴う世代間格差は大きい。
1945年生まれの70歳の世代は、年金を払った分の5.2倍を受け取り、今の30代は2倍程度になるという。
もちろん、かなり甘めの試算結果だ。いろいろと数字のマジックがあって、現実にはもっと若い世代には厳しくなる。
そんな状態でも、日本の若者は声をあげない。
選挙の争点にもならない。
右から左まで格差が問題というが、選挙で大きな票を持つ高齢者におもねり、若者に肩入れする党はないのが現実。
資本家対労働者というより、年寄り対若者なのだ。
そういう事実を意図的に隠している。
これは教育の成功なんだろうか。
それとも失敗なんだろうか。
18歳に選挙権を広げたのはいいことだが、そういう問題を社会が抱えているということを教えなければダメだと思う。
安保や憲法だけでなく、経済格差や年金の問題を伝えていかないといけない。
年金の問題は政治イシューではないから、事実を伝えればいいのだ。
医療も同じ。今の状況をちゃんと伝えればいい。
その上で、若者に判断を任せよう。
それは教育者の義務でもあると思うのだが…。