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2024.07.30 Tuesday
SDGsエコバブルの終焉
SDGsエコバブルの終焉という本を読んでいる。
この本はいろんな人が意見を述べているのだが、その中に藤枝一也氏という素材メーカーの環境・CSR担当の方がおられて、いかに日本がSDGs、ESGに偏っているか、ということを力説している。 引用すると、 「近年、メディアやコンサル、金融機関などが「SDGs・ESGこそ世界の潮流!」「日本は遅れている!」「バスに乗り遅れるな!」と言って日本企業を煽ってきた。しかし、海外ではSDGs・ESG・脱炭素のいずれもピークを過ぎており終焉に向かっているのが実情だ。日本国内ではあまり見ないESG・脱炭素への逆風に関する報道を以下に整理する。」 以下は省略して引用する。 2021年 ・米国でウイグル強制労働防止法が施行され、中国製太陽光パネルが輸入禁止に。 2022年 ・米国21州の検事総長が米証券取引委員会(SEC)情報開示規制案に反対する書簡を送付。 2023年 ・米資産運用会社ゴールドマン・サックスがパリ協定気候変動米国大型株ETF(上場投資信託)を閉鎖。 ・世界最大の気候投資家グループ「クライメート・アクション100+」からJPモルガン・アセット・マネジメント、ブラックロック・ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズの大手三社が離脱。 ・2024年 ・米調査会社モーニングスターが、2020年以降で初めてESGファンドの解約数が新設を上回り資金も流出していると発表。 これらは引用の一部だが、要するに「国内ではこれらの情報に触れる機会が極端に少ないため経営者の意思決定に偏りが生じている」ということだ。 SDGsについては、グーグルによると世界で"SDGs"を検索しているのは、2024年現在で日本がダントツ1位。 先進国で10位以内の入っているのは、台湾と韓国だけだ。 2位がルワンダ、3位がジンバブエ。 SDGsは、今では欧州でもアメリカでも検索してもいない。 もう興味がないのだろう。 もちろん、意味がないとは言わない。 しかし、総花的にいろんな「こうなったらいい」ということが書かれているが、それをどうやって実現するのか、優先順位はどうなのかなど、200の国が参加する国連では決められない。 だから、「言っているだけ」ということで、他国は考慮もしていないのだろう。 さらに、気候変動に関して、国連専門家グループから出された報告書について書いている。 そこでは、企業のネットゼロに対して、多くの企業が宣言しているが、ネットゼロの目標のみを示していて、炭素クレジットの基準や定期が未整備で、要するにいい加減だということ。 藤枝氏は、この意見には真っ向から反対している。 脱炭素バブルを作ってきたのが国連であり、それが後からこんな指摘をするのはご都合主義、マッチポンプと言わざるをえないという。 グリーンウォッシュ(偽の脱炭素)だらけにしてしまった張本人が国連だからだ。 グリーンウォッシュは、今流行りの化石燃料の代わりにアンモニアを使うなどというもの。 そのアンモニアを作るには化石燃料を使い、そこでCO2が出るからだ。(それは地中に埋めるらしい) ただ、その排出は海外でやるからOKというもの。 この手のグリーンウォッシュがたくさんある。 バカげていると思うが、それを推進させたのも、国連が脱炭素、脱炭素と煽ったからなのだ。 「企業側に悪意などなく、気候変動を経営の重要課題と位置付けた上で脱炭素目標を立てたのに「見せかけ」「グリーンウォッシュ」などと言われるのは心外だろう。しかし、脱炭素を宣言しさえすれば称賛される時期は終わったのだ。サステナビリティ部門の担当者には自社の脱炭素宣言やCO2実質ゼロを謳った製品、サービスについて虚心坦懐にふり返ることをおすすめする。購入電力の排出係数46%改善を前提としていたり、クレジットの購入を折り込んでいたり、そもそも削減計画に白地がある場合は、いったん宣言を取り下げるのがリスク管理としても企業倫理としても正解だろう。」 その証拠に、EUがCO2排出量相殺に基づく主張を違法として、企業がオフセットを必要とせずに達成できることを証明できない限り、2026年までに「クライメート・ニュートラル」の主張を禁止するということだ。 つまり、CO2ゼロを達成できないから、途上国から排出権を買ったりするくらいなら、宣言をやめろということになる。 実際、アムステルダムの大学の研究者グループが世界中の26のプロジェクトを調査した結果、ほとんどのプロジェクトが森林破壊を有意には削減しておらず、報告されたCO2削減量のうち、実際に削減できたのはわずか6%だったと報じているとのこと。 脱炭素を主張している側の国連自体でも、 「・国連は2018年以来カーボンニュートラルだと主張している。国連が実際に排出しているCO2は150万台のガソリン車の年間排出量と同等にもかかわらず、数百万ドル相当の「炭素クレジット」を購入することで「相殺」している。しかしながら、国連の排出量を相殺しているプロジェクトの中には、実際に環境を破壊し、あるいは人間の健康を害しているものもある。 ・過去10年間に国連が購入した炭素クレジットのうち35万件以上が、有害な大気汚染物質を排出したインドの廃棄物発電所など、「環境破壊や強制移住、あるいはプロジェクト周辺のコミュニティにおける健康問題の報告」に関連するプロジェクトから得られたものである。」 ということだ。 だから、怪しげな排出量取引などやめ、日本政府のJ-クレジットやGXリーグだから大丈夫などと考えるのはやめようと説く。 アメリカの大統領選でトランプが勝てば、グリーンディールはなくなり、脱炭素の終焉も加速する。 もはや、世界の潮流は脱・脱炭素、脱ESGであり、日本企業は自社の脱炭素宣言を撤回する方がいいという。 そのひな型を作ってくれている。転載・改変自由で、藤枝氏や出版社への断りは自由だというので、ここでそれを紹介する。 ーーーーーーーーーーーーーーー カーボンニュートラル宣言の取り下げに関するお知らせ 当社は202X年XX月に「2050年カーボンニュートラル宣言」ならびに「2030年度に2013年度比47%削減目標」を公開しましたが、これらの長期目標を取り下げることを決定しましたので、お知らせいたします。 カーボンニュートラル宣言策定に際しては、省エネ投資の強化による総エネルギー使用量の削減、第6次エネルギー基本計画の達成を前提とした購入電力のCO2排出係数改善、自家消費太陽光発電の導入、購入電力の再エネメニューへの切り替えや炭素クレジット購入等を折り込んでいました。 しかしながら、日本政府のエネルギー基本計画は第5次まで過去に一度も達成したことがなく、第6次についても当初から野心的な目標と言われており、将来の経営計画の根拠とするのは不適切でした。仮に国全体として2030年46%削減が達成されたとしても、京都議定書第一約束期間の6%削減達成と同じく森林吸収やクレジット購入による相殺分が含まれる場合、購入電力の排出係数改善を折り込むことはできません。 また、カーボンニュートラル宣言以降に設置を進めてきた太陽光パネルについて、自主調査を行った結果、製造段階における強制労働の疑いを払しょくすることができないという結論に至ったため、すべての太陽光発電の稼働を停止しました。当社では人権侵害に加担してまで必要とする売上は一円たりともありません。 電力契約の実質再エネメニューや炭素クレジットについても精査したところ、見かけ上のCO2排出量をゼロと表現することはできても、実態として地球環境へ排出されるCO2がなくなるわけでないことを確認いたしました。 一方、世界に目を移すと2022年11月にエジプトで開催された国連気候変動枠組条約第27回締約国会議において、国連専門家チームより企業のCO2実質ゼロ宣言の多くが「グリーンウォッシュ」であるとの指摘がなされました。欧州連合(EU)は2023年9月に不当商行為指令と消費者権利指令を改正し、2026年以降は企業がカーボンオフセットを伴わずに達成できることを証明しない限り「カーボンニュートラル」主張が禁止されることになりました。 こうした状況を鑑み、当社では2050年カーボンニュートラル宣言、ならびに2030年47%削減目標をいったん取り下げます。今後は2030年や2050年などの期限を切らずに、省エネ活動や人権に配慮した再エネ導入などの施策を積み上げ、正味のCO2排出削減に寄与する現実的な目標を改めて設定し直します。 当社はSDGsの理念に賛同しており、今後も持続可能な社会、ならびに誰一人取り残さない社会の構築に向けて真摯に取り組んでまいります。 ーーーーーーーーーーーーーーー とてもいい取り組みだと思う。 最後に、脱炭素に取り組む意味を書いている。 「脱炭素は気候変動よりも資源枯渇として捉えたほうがよい。人類がこれまで恩恵を享受してきた化石燃料はいずれなくなる。500年後や1000年後の子孫のことを考えると、いつかは脱炭素しなければならない。しかし、2030年半減、2050年ゼロという性急な目標を据えたために、経済性、自然破壊、人権侵害などを顧みず、再エネ導入が強行され世界中で多くの歪が生じている。企業でグリーンウォッシュが拡大するのも脱炭素の時間軸が間違っているためだ。たとえば2100年半減、2200年ゼロなど長期的に取り組むのであれば筆者は大賛成だ。」 ぼくもそう思う。 化石燃料は宇宙からの贈り物だと思う。 それを使い果たすまでに、脱炭素をしなければならない。 今、現実的に考えられるのは、電気エネルギーであり、それを脱炭素で生み出し、持続可能なのは原子力だろう。 そういう意味では、長い目で見て、原子力の研究者を育てることは地球のためであり、資源のない日本人が負うべき人類への責任だと思う。 |
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