スタートアップとは「短期間で、イノベーションや新たなビジネスモデルの構築、新たな市場の開拓を目指す企業」のことだ。
東大のトップ層は今や大企業よりもスタートアップに就職するほうが圧倒的に多いらしい。
その理由を、経営共創基盤CEOの冨山和彦氏が
記事で語っていた。
冨山和彦氏というと、「日本には、
Gの世界、Lの世界がある」という事を言っていた人。
G型大学、L型大学という言葉も作っていた。
彼が言うには、今の日本企業は”上から目線”という深刻な病気にかかっているらしい。
ホームページの「役員一覧」が、60代、70代の「ザ・日本人」といったおじさんたちばかりの会社はダメだという。
グローバルに活躍する優秀な学生には「わが社は女性、外国人、若者を差別します」と全力でアピールしている、と映るからだ。
これは大谷翔平に「野球がうまいのはわかるけど、まずは球拾いとバット片づけからやって」というようなもので「日本の大企業に就職したら悲惨なことになる」ということだ。
いくら大学院で人工知能のすごい論文などを書いていても、上司に報連相をたたき込まれ、品質管理などの基礎知識を学ばされる。
これでは、スゴイ人材が行くわけがない、というわけだ。
そして、海外からも優秀な人材を確保しようと思えば、「日本語を話せること」という条件はナンセンスになる。
それはそうだろう。
今やそういう人材は日本企業でも、海外法人で雇っているはずだ。
日本の企業では、給与体系に合わないからだ。
最近、日本でも新卒1000万円を技術を持った人に払う、というような制度ができたらしいが、それがニュースになるくらいだからまだまだだ。
「企業は人なり」とか言っても、日本の大手企業にはいまだに「採用してやる」という「上から目線」があるという。
ぼくもそう思う。
新卒一括採用、年功序列、終身雇用というシステムではもう対応できないのだ。
学生の側から見れば、AIのエンジニアは20代で1000万円、2000万円を稼ぐのは当たり前で、GAFAや中国企業のグローバル水準だという。
「この若者たちは「大きな組織はとにかく面倒くさい」と考えています。ムダな会議が繰り返される。稟議書にハンコが多い。何かはじめようと計画すれば「それはいかがなものか」と横やりが入る。ちょっと炎上すれば、責任問題だと大騒ぎになる。出張規定なども細かくて融通がきかない。それらがものすごいストレスを生むことが、大企業のほうはわかっていません。」
記事にある通りだ。
日本企業のトップは仕事もしていないという。
重要な話し合いの場には出ず、部長あたりが交渉し、本社に持ち帰り、稟議して…、というプロセス。
海外の企業なら、社長が出てきて即断即決という場面でもそんな状態。
海外の企業との提携などの場面では、そういう状態なら敬遠される。
ここでも「上から目線」なのだ。
冨山市は35年前にビジネスの勉強をするために、ボストンコンサルティンググループに就職した。
今なら人工知能や生命科学を勉強していたはず、という。
そこで、世界のエリートたちは巨大サラリーマン企業に自分の人生を委ねる、という生き方は選択しないということを知った。
日本のように、一社で勤め上げるのは特殊な働き方だという。
そこで当時から「学卒一括採用、終身雇用、年功序列、企業別組合などで維持された“閉じた企業”のモデルが、このまま世界を席巻しつづけるはずはない」と予想できたという。
「実際、日本企業をコンサルティングすると、すぐに撤退すべき事業を抱えているのに、事業の撤退や売却、リストラは一切できない。合理的な意思決定からほど遠く、選択肢がものすごく狭い。完全に身動きがとれなくなっていました。
そこでやむを得ず、ドラスティックな改革を避けて戦略シナリオを描きます。効果は小さいとわかりながらも、合理的に戦略を組み立てる。しかし、それさえも実行されない。この業界に入って数年で「これはもたない」と確信しました。
当時は、NHKスペシャルで「電子立国 日本の自叙伝」が放送され、半導体では日本は負けないとみんなが思っていた頃です。しかし産業の歴史を冷静に振り返れば、20年から30年でパラダイム転換が起きなかったことはありません。同じビジネスが40年も50年もつづくことはないのです。」
その後彼は携帯事業に関わる仕事をする。
そこで、大企業の人たちを見て、あまりの生産性の低さに驚いたという。
「なにしろ部課長以上は、目を疑うほど生産性が低い。朝から会議を開き、1日かけて何も決まらない。やっとプランニングしたと思ったら、こんどは誰も営業に出かけない。みんな大企業から出向してきた高学歴のエリートサラリーマンたちです。」
「この経験があるから、のちに産業再生機構で手がけた大企業の経営再建では、管理部門の大胆なリストラが実施できました。大企業の管理者は半分に減らしても、事業にまったく支障がないと確信していたからです。むしろ人数が多いほど、調整業務が増えていく。企業の根回し文化が変わらないとすれば、根回しの相手を減らしたほうがいいということです。」
日本がこの20年成長できないのは、過去の成功体験を捨てられないからだろう。
ちょうど、過去の栄光である大艦巨砲主義を信奉して負けた日本海軍と同じだ。
早くそれに気づいて、変わらないといけない。