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2016.08.29 Monday
もう一つのアメリカ史 2
オリヴァー・ストーンのドキュメンタリー。
10回の放送の後半を見終わった。 ぼくが知っているアメリカとはだいぶ違うアメリカが描かれている。 軍国主義の日本から舵を切って民主主義を持ち込み、戦後の物資を補助してくれたアメリカとは違うのだ。 冷戦後のアメリカは覇権主義に陥り、ベルリンの壁の崩壊は当時のソ連に生まれた民主的な考え方を持ったゴルバチョフのおかげだったと説く。 その後も続いたアメリカ共和党のソ連脅威論と、ベトナム、中東、中米やアフリカでの国益保護のための行動がどんどん紹介される。 この時期、アメリカの外交はタカ派で固められていたという。 へー、と驚くことばかり。 ニクソン、フォード、カーター、レーガン、ブッシュ(シニア)、クリントン、ブッシュ(ジュニア)というような歴代の大統領が出てくる。 そして2000年のブッシュ(ジュニア)とゴアの大統領選挙の疑惑にも触れ、ブッシュ政権での外交もタカ派で占められていたことを暴き、この時期のアメリカの独善的な行動を批判する。 ぼくは2000年の選挙の時、アメリカにいたからよく覚えている。 印象としては民主党のゴアが勝ちをブッシュに譲ったという感じだった。 日本ではアメリカのやっている事は、日本に関係のあることしか報道されない。 されているとしても、ほとんど目に止まらない。 グレナダやソマリア、パナマなどへのアメリカの侵攻が紹介されたが、こんなこともあったのか、という感じ。 日本がバブルに浮かれ、その後崩壊して沈んでいた頃こんなことがあったのか。 ブッシュ(ジュニア)時代は開かれた記者会見の数も最低数で、本当に無能だったと描かれる。 そして、9.11が起こる。 アメリカが60年にわたって築いてきたものが何だったのか、という自問のなかで、テロ対策としてアメリカが暴力に訴えたことが失敗だったという捉え方だ。 ブッシュではなく、ゴアだったら…とオリヴァー・ストーンは言う。 アメリカが国際法を無視し、同盟国の言うことも聞かず、暴力に訴えてきたことが9.11を起こした、という立場だ。 そして2009年民主党のオバマが大統領になった。 共和党のブッシュから民主党のオバマに変わり、少しまともになったように見えるが、基本的にはオバマはブッシュの路線を引き継いているとのこと。 ヒラリーもタカ派の国務長官として紹介されている。 オバマのノーベル平和賞の受賞も、強烈に批判している。 広島訪問はそれに対する贖罪だったのかと思うくらいだ。 シリーズの締めくくりにあたって、今までのアメリカのように覇権を求める先には平和はないという。 中国はアメリカを見習ってはならない、ともいう。 過去にアメリカが輝いた瞬間は確かにあった。 しかし1970年代以降、正義の名のもとに間違った方向に進んだのかもしれない。 それをオリヴァー・ストーンは伝えている。 正義というのは便利な言葉だ。 正義を振りかざされる側から見たら、悪になる。 何かの価値を守るのが正義だとすると、そこに絶対的なものがないと、それは一面では悪だ。 そこを見定めることが必要なんだと思う。 そして、西欧や北米で言われている「自由」というようなものがその基準になるんだとぼくは思ってしまう。 そういう価値観を学んできた。 自由があるからこそ、オリヴァー・ストーンのように批判もできる。 こんな番組がロシアや中国ではきっと作られないことを思うと、やっぱりアメリカはマシだと思う。 ベトナム戦争以降のアメリカ史を、本国ではどのように学んでいるんだろうか。 今の日本の若い人たちにこれを見せて感想を聞いてみたいと思う。 |
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