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2020.08.04 Tuesday
高橋泰教授その2
こないだ紹介した高橋靖教授の記事の続編が、東洋経済に出ていた。
こちらの記事で、新型コロナウィルスの感染メカニズムを説明している。 ウィルスの「暴露力」というのは、人の体内に入り込む力のこと。 コロナはそれが強い。 体内に入った後、人の上気道部の細胞の表面にある「ACE2受容体」との結合を目指す。 結合に成功したら、人は「感染」する。 感染したら、人の細胞はウィルスを取り込み、細胞内で増殖したウィルスが、再度細胞外に放出される。 コロナはインフルエンザに比べて、増殖するウィルス数は少ないという。 だから「増殖力」は弱く「伝染力」も弱い。 また人の細胞を刺激したり、破壊したりする「毒性」もインフルエンザより弱いという。 前回も書いたが、高橋先生の仮説で一番大事なのは、日本人が持っている「自然免疫」で98%は完治するということ。 だから、抗体ができない。日本人にとっては、それほど弱いウィルスということだ。 ウィルスの立場でいうと、うつりやすくて毒性が強いと宿主が死んでしまって生き延びられないが、うつりやすくて、毒性が弱いから生き延びやすいということになる。 一部の感染者で見られる、サイトカイン・ストームに関してはコロナに限らず、それ自体のメカニズムはよく分かっていない。 しかし、生体防衛のシステムが誤作動して、ミサイル10発でいいところを、100発打ってしまう、という現象がおこるという例えで説明している。 日本と欧米の違いは、3つ。 1つは環境面で、リスクの高い高齢者をウィルスから隔離する仕組みが徹底していたこと。 もう一つは自然免疫が何らかの理由で強かったこと。 さらに、サイトカイン・ストームが起こりにくく、重症化しにくかったこと、という説明。 死亡者数が欧米の1/100になるためには、高齢者の暴露率が欧米の1/4、自然免疫で発症率の差が1/10、サイトカインの発生により死亡する率が1/2.5とすると、説明できるという。 このシュミレーションで実際の重症者数、死者数の動向に当てはめると、現状の暴露比率は30〜40%ということらしい。 すでに、国民の3割強が暴露しているということになる。 あくまでも暴露であって、発症ではない。 自然免疫で治る人が98%、発症は2%で、重症化する人は暴露した人の0.01%にも満たない。 クルーズ船や武漢は閉鎖環境が悪さをして、発症率が高くなったと考えている。 現在はPCR検査を増やしているので、陽性者の発見が増えている。 繰り返しになるが、PCR検査陽性者数を重視しても、あまり正確でないという。 当たり前だが、一人の人がずっと陽性とか、ずっと陰性とかいうことはなく、コロナにかかって暴露をして、感染すれば陽性になるし、それが自然免疫で撃退すればPCR陰性になる。 そしてまた次に感染すると、無理もしていたので自然免疫で撃退できず、PCR陽性になるし、それが治ると獲得免疫ができて抗体ができ、抗体検査は陽性、PCR陰性になる。 そしてまた感染したら、抗体ができていて発症はせず、それでもPCR陽性になる。 つまり一人の人がPCR検査でいろんな状況になる。 結局、抗体があってもPCRは陽性になりうるし、PCR陰性と言われても、次の日に暴露して陽性になるかもしれない。 今の検査でPCRの陰性というのは、「検査時の前1週間程度は、新型コロナに感染していない」ということだけを保証することであり、検査直前の感染可能性は全く否定できないということだ。 したがって、企業が「陰性証明」を持ってこいなどというのは意味がない。 無症状者の検査を増やして、陽性者を入院させたり、隔離したりすることは医療資源を消費するし、無症状なのに入院、隔離させられた人の社会・経済活動を制限するので、社会全体の損失だという。 実際、世界的に見ても検査数の拡大で感染者数は伸びているが、死者数はそれほど伸びていない。 無症状者が活動することで、高齢者にうつすことも懸念されるが、それはシミュレーションによると10万人あたりの死者が3人を超えることはなさそうという結果。 一方で、10万人あたり16人が自殺で亡くなっており、経済活動の停滞はそれを急増させる可能性があるという。 まことにもっともな意見だと思う。 同じことばかり書いているが、本当にどんどん企業が倒産する前に何とかしないといけないと思う。 7月31日の日経によると、リストラの失業者数が19万人増えて41万人だという。 何もしないと42万人死ぬといった専門家はどう考えても外れだが、この41万人がこのまま職がない状況が続くと本当に自殺者が増える。 この調子なら、まだまだ求人は減るだろう。 本当にこのままでいいのかと思う。 |
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