考えたこと2

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専門職大学
いよいよ2019年4月から、新しい種類の大学が開学できるようになった。
名前は「専門職大学」。
狙いとしては今の偏差値下位の大学を改変したいということだろう。
文科省の説明では、「大学よりも実践的で、教養も身につく」というところが狙いという。

今すでに専門に特化した大学は、専門職大学を作りやすい。
調理専門学校の辻調グループは、従来の調理師育成とは異なり、飲食業の経営を学ぶ専門職大学を新設しようとしている。
文科省の狙いは、大学と呼ばれるところを増やして、天下り先を増やすことかもしれないが、2014年にこの専門職大学の元になるものを提唱している、株式会社経営共創基盤CEOの冨山和彦氏の考えは違うと思う。

冨山氏は従来の大企業とか中小企業とかいう分類をやめて、グローバル企業(G型)とローカル企業(L型)に分け、それぞれに対する人材をG型、L型と分け、せいぜいGDPの3割程度のグローバル企業を担う人材を育成するところを従来の大学、そして主にローカル企業を担う人材を新しい職業訓練校(これが専門職大学になると思う)にしよう、と言っている。
専門学校からの転換などではなく、今の多すぎる大学を2つに分けろと言っているのだ。

これは本当にいい意見だと思う。
冨山氏の意見によると、専門職大学になるべき大学は、現在の下位の大学。
文科省がシラバスを見て、「大学なのにbe動詞の授業がある」「大学なのに英語の筆記体を教えている」などと文句を言っている大学だ。
多すぎる下位の私学は、受験生を稼ぐために入試が機能していない。
もともと、一般入試を受けて入る人が少なく、推薦、AOというほとんど学力を担保しない入試で入る学生が多い。
また、一般入試を何度もやって、合格者を拾っているのが実情。
よほどのことなければ、落ちない入試になっている。
それほどまでに、入学者を確保したいのが実情だ。

そういう学生を入れて、心を入れ替えさせるべく真面目に教育しているのならいいことだが、真面目にしようとすると前述のように文科省から文句を言われる。
だから、本気でそういうことに取り組んでいる学校はほとんどない。

高校の進路指導も、従来なら就職させていた生徒でも、どんどん大学を受けさせる。
学費がないという親には、奨学金があるから大丈夫と言う。
そんなこんなで「全入」という学力低下が起こった。

そういう学生たちを教える大学の先生がまた大変だ。
自分たちが習ってきたやり方を踏襲しようとするが、そんなやり方では無理だ。
専門性を大事にしすぎるあまり、難しくて学生たちに何を学んだかと聞いても答えられない。
だから、履歴書で一番書けないのが「勉強で頑張ったこと」になる。

アラカルト式の授業が、時間割を埋めるための授業になる。
自分で自分の学びを設計などできない。
取りやすい単位を取り、時間割を埋めて、残りの時間はアルバイトという学生も多い。
その証拠に、多くの学生が3回生でほとんどの単位を取れる。
そうしないと、就職活動に差し障りが出るからだ。

卒論は、何でもいいから好きなテーマについて書く。
教員の専門性など関係がなくても、仕方ない。
アフリカの文化が専門の先生のゼミで、学生がヒップホップのダンスについて卒論を書いたりする。
まあまだ少しは関係があるだけマシだが、指導教員はヒップホップについての専門性はなくてもOK、という程度の論文になるのは致し方ない。
もっとひどいところでは、卒論を廃止している。

そんな状態で4年間過ごすのはもったいない、と思う。
意義がゼロというわけではない。
モラトリアムにも意義はあるだろう。
もちろん、課外活動に力を入れれば、社会に出ても役に立つ。

しかし、えてしてそういう大学では、授業外での学生のつながりなどほとんどない。
まず下宿生が少なく、ほとんどが地元の学生。
さきほど述べたように、奨学金をもらってはいるが、経済的にはアルバイトをしないといけなかったりする。
それで、授業が終わったらすぐにアルバイトに行く。
アルバイトの充実感を味わって、熱中する学生も多い。
そういう学生の「学生時代頑張ったこと」は「アルバイト」になるのは必然だろう。
だから、学生課が頑張って課外活動に力を入れようとしても、なかなか学生がついてこない。
それは構造上仕方がないことなのだ。

そのような下位の大学を冨山氏のいう「職業訓練校」にするというのが、専門職大学の姿だと思う。

しかし、下位の大学はそう簡単に変わらない。
ネックは教員だ。
4割の教員を実務家教員に変えないといけない。
これが超えられない壁なんだろうと思う。

このままだと、文科省の思うつぼになるぞ。

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