考えたこと2

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手書きの効用
東大の言語脳科学者の教授が、『デジタル脳クライシス――AI 時代をどう生きるか』という本の中で、

「大学で物理学の授業を担当していて、私がたくさんの数式を板書していたときのことです。今書いた内容について質問したら、「書いているときには考えられなかったので、分かりません」と返答した学生がいました。「書きながら考える」ことが当たり前だと思っていた私は愕然としてしまいました。」

と書いている。
最近の学生はキーボードでノートを取るので、そういう返事になるらしい。

アメリカの研究結果でも、手書きの方がいいという。

「たとえば「インダス文明は何年前でしたか?」といった事実に関する問題では、キーボード群と手書き群のスコアに統計的な差はありませんでした。ところが、たとえば「社会の平等性に対する取り組みは、スウェーデンと日本でどのように違いますか?」という問いのように、「平等性」といった概念を適用する問題については、手書き群のほうがキーボード群よりも有意に良い成績を出しました。」

書かれるテキストの情報量はタイプの方が圧倒的に多い。
それでも、手書きの方が脳を使うらしい。

たしかに、タイプというのは自分で考えながら書くときは早く書けていいのだが、聞きながらノートをとるというような場合は、考えずに聞いて打たないとたくさん打てないということになる。
どうしても、そういう動作で脳を使ってしまって、肝心な内容のことを考えられなくなるのだろう。
ノート量の生産性が多い分だけ、脳を浪費しているのだ。

「「手書きでノートを取る」ことで内容の理解がより深まるわけで、キーボードは文明の利器とはならないのです。それなのに、自分のパソコンを持つことで手書きなど必要なくなったと思い込んでいる学生は多いのです。こうした事実を踏まえ、私は自分の講義の冒頭で、できるだけ手書きでノートを取るよう学生たちに呼びかけるようにしています。」

それは正しいと思う。

「「メモを取る」という行為は何げない簡単なことのように見えて、実は高度なマルチタスクであることを忘れてはなりません。マルチタスクとは複数の作業を同時に行うことです。ビデオを視聴しながらノートを取ることは手書きもタイピングも同じですが、メモを取るときには全体の流れの中で何が肝心の要点なのかを思考する過程が同時に加わります。それがとても大切なマルチタスクなのです。」

やはり手で書くことは大事なのだろう。
タイピングではみんな文字の大きさは同じだが、手書きなら文字を大きくしたり、色を変えたり、丸で囲んだり、下線を引いたり、矢印で結んだりすることができる。
それ自体が、内容をまとめていることになる。

手書きのメモを見る方が、たいぷされたテキストを見るよりも、圧倒的に情報量が多い。
テキストの羅列なら見つけにくいが、手書きのメモならどこを見ればいいか、ということがわかるし、そういう書き方をする。

学校法人で驚いたのが、議事録。
ぼくのいた法人では、教授会の議事録など、まさに議事録で言った通り書いてある。
ボイスレコーダーで録音して文字を起こしているのだ。
アホちゃうかと思ったが、伝統だから仕方ない。
だから、発行までに時間がかかる。

ぼくが主催する会議ではぼくが議事録を作った。
当然すぐに発行したが、そういうのは正式文書として認めないようだった。
それでも、文責は自分ということにして発行したけど…。
そうしないと、アクションが1ヶ月先になってしまう。
民間企業では考えられないことだ。
話がそれた。

そういう風に作った逐語録について、誰も疑問を持っていなかった。
不思議な組織だ。

情報量は多くても、誰ももう一度読んだりしないだろう。
いかに情報量を少なくして、大事なことを伝えるか、というのが議事録の役割だと思う。

ワープロは使うが、下線を引いたり、イタリックやゴシックを使ったり、大きさを変えたり、色を変えたり、見出しをつけて箇条書きにしたりして、まとめる。

そういう能力は大事だと思う。

そして、それは授業中に取った手書きのノートで鍛えられるのだろうと納得した。




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