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2023.09.03 Sunday
消えた女 藤沢周平
藤沢周平の時代小説。
彫師伊之助のシリーズの1作め。 手違いで2作めを先に読んでしまった。 昭和58年の初版だから、1983年。 今から40年前。 さすがに時代小説だけあって、全く古さは感じない。 当然といえば、当然だが、いろんな機器を使わず、人間の目と耳と足とカンを頼りに物語が進むのは心地よい。 版木彫り職人をしながら、どこかに消えた昔の親分の娘を探す、という物語。 主人公の伊之助は、家庭を失った孤独な男。 自分のルールを持って、ブレないところが魅力で、乾いた存在。 でも、ウェットなところもあって、そこが一層人間らしい。 藤沢周平の新趣向の捕物帖だと背表紙に書いてある。 だいたい、お家騒動とか、派閥争いとか、人情ものとか、そんな舞台が多いような印象だが、この捕物帳は新しい藤沢周平(と言ってももう亡くなっているが)の挑戦だったらしい。 池波正太郎の鬼平犯科帳などとは違って、孤独で重い感じの小説。 それでも、楽しめる。 最後まで読んで、よかったなあ、という読後感が残る。 母の本棚から持ってきた本。 まだまだある。 |
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