![]() |
2021.09.10 Friday
禁煙
久しぶりに小林秀雄の講演CDを聞いた。
一時は小林秀雄にはまって、何度もCDを聞いたものだ。 全部で16枚。 いずれも味わい深いものばかり。 本居宣長の本を書いていた頃の講演だ。 他愛ない話から始まって、コレステロールの話や漢方の話が続く。 彼は胃が悪かったのだが、タバコを辞めて良くなったという。 医者に診てもらって、タバコをやめろと言われて、その場でタバコとライターを置いて帰ったという。 そしたら、医者が追いかけてきて、タバコとライターを返されて、医者に「いつもタバコとライターを持っている状態でないと、本当にタバコはやめられないぞ」と言われる。 「なるほど」と納得して、持って帰って、それから禁煙した。 そのときに言っていたのが、原稿を書く時の間合いだという。 自分は原稿を30数年書いてきたが、禁煙して数カ月間書けなかった。 これはプロの物書きでないとわからないだろうが、筆が進む間合いがあるらしい。 その時間を、タバコを吸って待つという感じなのだろう。 それがなくなると、書けなくて困った、ということだ。 ぼくは2008年の10月に脳梗塞をやって、その時禁煙した。 6日間入院して、入院中は禁煙して、その延長で今日がある。 もう13年経つ。 その時のことはあまり覚えていないが、どちらかというと話すほうがしんどかった。 書くことに困った記憶はない。 やっぱり小林秀雄はプロなのだ。 間合いが測れないと、書けなくなる。 プロの呼吸というようなものだろう。 講演の中でも、「君たち素人にはわからんだろうが、プロには…」ということを言っていた。 ぼくは入院のおかげで禁煙できたが、そんなことでもなければ難しかったと思う。 医者の一言で禁煙できるというのは、さすがだと思う。 |
![]() |