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2017.05.02 Tuesday
大学の丸投げ2
2月24日に「大学の丸投げ」について書いた。
その続き。 入試業務以外でも、業者に丸投げしている大学は、大部分が新設校だと思う。 90年代に小泉改革で規制緩和され、91年に大学設置基準が緩和され、新設校が続々とできた。 それらの学校はだいたい今は苦しい学校だ。 90年代に新設校が増えたことを裏付ける数字が、大学進学率。 91年には25.5%だったものが、2009年には50.2%まで上がっているのだ。 それら新設校は、今まで大学に入っていなかった学生25%を吸収したのだから、順当に考えてレベルは下る。 もちろん、大学教員も今までなっていなかった人たちがなるのだから、レベルは下る。 また、レベルは下がったとはいえ、大学教員の免許なるものはないから、そこでの先生は従来のアカデミックルートを通って教員になる。 教員は旧来の大学での研究というイメージを持っているが、入ってくる学生は従来のように研究するセンセイの背中を見て勝手にやれるというような学生ではない。 したがって、下位の大学では教育が成り立たない事が増える。 だから、ミスマッチが起こる。 それと併行して少子化が進展し、2000年代に入って「全入」ということが起こる。 大学志願者の数よりも、入試の定員の方が大きくなった。 つまり、入れる水よりも、入れ物のほうが大きくなったのだ。 実際、1992年には3人に一人いた浪人生が、今や8人に一人になっている。 80年代までは、入りたくても入れないから浪人していた受験生が、90年代になって大学が増え、志願者が減り、入れるところに入るようになった、ということだ。 それに合わせて、大学の入試も多様化する。 何度も書いたが、推薦、AOという選抜も増え、一般入試の回数も増えた。 関西の大手私大では、一つの学部に入ろうとすると、14回のチャンスがある、ということだった。 ぼくらの世代では、「推薦」というと「勉強ができる人」という感じだが、今はそうではない。 学校推薦は、一般入試を受けて入らない人が先生からもらうもの、という側面があるし、公募推薦となると校長の推薦をもらえばいい。 「評定平均」というこないだ書いた内申書の類を満たせばOKだ。 さらに、下位の学校ではAO入試を多用する。 なぜAOかというと、AOは一般入試の枠になっているからだ。 四年制大学は、推薦入試は半分まで、という文科省のルールがある。 だから、残り半分をAOで来てもらおう、ということだ。 つまり、定員を埋めるために、できるだけ易しい入試を増やしているということだ。 そして、一般入試は実施はするが、偏差値を上げるためにできるだけ上の方だけを合格させる。 それが下位の大学の実態。 これでは従来の教育の在り方では苦しいのが明らかだろう。 少子化と全入化で、受験産業の性格も変わってくる。 主に浪人生の面倒を見ていた河合塾などの予備校は、現役生にシフトし、さらに高校から中学、Z会などは小学校や幼稚園まで広げている。 その過程で、小さな予備校は大手に吸収されたり潰れたりした。 逆に小学生をやっていたベネッセは今は大学のビジネスにも入っており、生涯学習などもやっている。 それだけ子どもが減って、過当競争になったということだ。 今はネットのインフラも整備され、カリスマ予備校講師を集めて授業配信をやるところも出てきた。 そのうち、大学もそういうかたちになるかもしれない。 そんな変化が90年代以降起こって、今のような状態になったと思う。 だから、大学は従来の大学教育と学生のミスマッチを解消するために、教員では対応できない部分を「丸投げ」することになった。 長くなったので、「大学の丸投げ」の実態についてはまた今度。 |
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