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2016.05.09 Monday
推薦入学?
ぼちぼち企業側も大学入試の多様化に対応し始めたらしいという記事があった。
ある会社の人事によると、「推薦組」は入社2年目ぐらいから伸びないケースが比較的多いということだ。 会社の人事の責任者の年代なら、推薦というと成績がよく、経済的にちょっと苦しい家庭の学生ということで、どちらかというと好印象を持ったはず。 しかし、今の私立大学がやっている「推薦入試」というのはそういうものではないことが多い。 ひとことで言うと、「受験がシンドイ」という生徒の気持ちにつけこんで、学生・大学双方の利害が一致してやっている、という感じだ。 今の私立大学ではAO、推薦で多くの受験生を取っている。 早く楽になりたいという受験生と、早く入学者を集めたい、という学校側の思惑が一致してこんなことが起こる。 資料によると国公私立全体で見ても、平成12年度に合格者の66%あった一般入試が、平成24年度には56%に減っており、私立大学では今や一般入試を経て入る人が49%と約半分というのが実情。 センター入試の改革などやっているが、もともと半分以上の学生はAO、推薦入試を選択し、そんなものは受けない。 そこの制度設計をどうするか、というのが入試改革の一つの肝だろう。 なぜAO、推薦を選んだのかというアンケートでは、「早く進学先を決めたかったから」、「一般入試へ向けての受験勉強は大変だったから」という予想通りの答えが上位に並ぶ。 高校も年明けまで受験勉強に励む生徒と、秋に早々と入学を決めてしまう学生とがいては、指導しにくいと思うのだが…。 穿った見方だが、高校の先生方にとっては推薦で入学したいという生徒は平常点とか、評定平均とかいう点で生徒の日常を管理できる。 それが生徒に与えるプレッシャーというものも、ぼくにはあまりよいものとは思えない。 自由な批判精神を育てにくくする。 そんな風にして入った学生の卒後の評判がよろしくないというのは、想像に難くない。 推薦入学者の企業での評判は、「積極性がみえない(主体性が低い)」「我慢ができない(ストレス耐性が低い)」「融通が利かない(適応力が低い)」というようなものらしい。 もちろん、全部が全部というわけではないが、そういう評判が立ち始めたということだ。 記事によると、こういう実態がある。 「「あなたは一般ですか?それとも推薦ですか?」 最近では、人事部の懸念を受けてか、就職活動でこのような質問をされた学生がたくさんいるようです。ちなみに一般とは受験組のこと。さらに推薦であることを伝えると、「採用に不利である」との噂が広まっているようです。 「『AOか推薦入学です』と答えると、その後企業から連絡がなくなる。あるいは同じ大学・学部の同級生で受験組は続々と内定を取っているので、企業が推薦組を避けているとしか思えません」と、取材した学生は主張します。ちなみにマイナビが大学生の入学方法と内定率の関係を調べたところ、一般入試で入った大学生の内定率は60.1%。ところが推薦組は51.6%と10%近く低く、AO入試組に至っては43.6%という結果になったようです。この噂に関する是非は回答しかねますが、会社が推薦組を採用して痛い目に遭ったとの声は筆者もたくさん聞いたことがあります。ただ、「そうはいっても推薦組を採用しないといったら採用できる人材が限られ過ぎる」のが実態でしょう。」 面接で入試の経路を聞く、というのはどうなんだろうか。 面接では仕事をする上での能力と関係のないことは聞いてはいけない、というルールだが、入試経路はややこしい。 この問題が大きくなると、大学側からは「本人の能力とは関係がないことだ」という意見は出るだろう。 入試を通ったということは、一般的にはその大学で学ぶことができる能力がある、ということになる。 しかし、胸に手を当ててよく考えたら、そうでもないという大学関係者は多いはず。 偏差値を上げるために、一般入試の合格者を減らしたいという気持ちもあるだろう。 早めに入学者を確保しないと、眠れないという入試関係者もいるはずだ。 この動きが大きくなったら、自然とAO、推薦入試は減るだろう。 それで入学者を取っても、出口がなくなるからだ。 それでも、AO、推薦に頼って入学者を稼がざるをえない大学は、淘汰されるんだろう。 できれば、そうなる前に、入試改革をちゃんとやってほしいと願う。 |
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