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2025.11.17 Monday
最後のグレーディング
ぼくが会社に入ったのは1979年。
入社の年は12月まで研修だった。 販売、製造、サービスなどの部署で実習をする。 その時のことはよく覚えているが、なかでも生産技術の部署で実習していたときのこと。 ちょうど、ぼくがいるときに定年退職の人がいた。 明日で退職という日だった。 部署の人がその人に声をかけて、「最後のグレーディングに行こう」と言った。 グレーディングというのは、検査でハネたもののグレードを分けること。 工場では毎日やっていた。 「行こか」と言って2人して現場に向かった。 そこでどういう会話がされたかはわからない。 ぼくらは新入社員だったので、見ていただけだったが、ああいうふうに定年の日を迎えるのか、となんとなく思った。 いつものように働いて、次の日は退職。 もちろんいろんな手続きはあるだろうが、当時の60歳はおそらく今よりも老けていたから、この人は40年ほど働いてここまで来たのかという感じだった。 当時の男性の平均寿命は73歳だから、ちょうど10歳違う。 だから、感覚としては今の70歳が当時の60歳。 あと1年ちょっとだ。 幸か不幸か、ぼくは定年退職を迎えたことはないが、あと1年ちょっとでそういうことになるかもしれない。 その時ぼくの「最後のグレーディング」は何になるのだろうか。 |
