考えたこと2

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海鳴りと蝉しぐれ
今日も本の話。

入院の事を言うと、せっかくだから、この本を読めと言われた。
それが藤沢修平の本。

「海鳴り」と「蝉しぐれ」の2冊。
どちらが藤沢修平の名作か?ということでもめて、その2冊が残ったらしい。
結局2対1で「蝉しぐれ」が勝ったらしいが、一度読むことを勧められた。
藤沢修平は読んだことがなく、初めて読んだ。
なかなか味がある時代小説だった。

まず、男性の小説だというのが第一の印象。
女性も読んで楽しめると思うが、これは藤沢修平が男性であり、その視点で書いているから仕方がない。

「海鳴り」は初老の男性。
老いを感じ始めるころの男性が主人公。
この気持ち、すごくわかる。
初めて白髪が混じり始めた髪の毛を見つけたときの話で、物語りは始まる。

人生の下り坂に入って、少しいったころ。
自分で自分の限界を知ったころ。
だいたいの自分の人生が見えるころ。
そんな時代の男性の気持ちがよく出ている。

結末は書かないが、上下2冊、一気に読ませる。

ああ、そういうことを思うんだよなあ、と思う。
誰しもが、この主人公のように、波乱にとんだ人生のドラマを迎えられるわけではないが、そう望む気持ちは誰にでもあるだろう。

「蝉しぐれ」は若い男性が主人公。
こちらのほうが、夢と希望がある。
しかし、藤沢修平らしい諦観があるのも事実。
この人が描く人生は二つとも、あきらめという気持ちが流れている。
その流れに逆らって、あがいてみるが、所詮ただのあがき。
流れに逆らうことはできない。

「蝉しぐれ」は若さが心地よい。
十分に波乱にとんだストーリー。
殺陣の場面もすばらしい。

この人が書く女性は、彼の理想なのだろう。
ヒロインは同じような女性だ。

さて、どちらが名作か?
一冊を選べといわれると、難しい。

年を取ったから、「海鳴り」のよさはわかる。
しかし、小説はストーリーを楽しむものだ。

そういう意味では、「蝉しぐれ」だろう。

しかし、難しい。

やっぱり「蝉しぐれ」かな…。


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