考えたこと2

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人は金のみにて働くにあらず
心理学者エドワード・デシ教授の実験にこんなのがあるらしい。

 大学生に面白いパズルを解かす実験
 ・学生を2つのグループに分ける
 ・一つのグループには一つパズルが解けると1ドルの報酬を与えると約束し、もう片方のグループには何も言わない
 ・実験室に学生を一人ずつ入れ、パズルを解かせる
 ・制限時間13分のパズルを1時間に4問解かせ、それを3回繰り返す
 ・2回目と3回目の間に8分休憩を設け、自由にしてよい、と指示する
 ・自分は用があるからと言って部屋を出て、この休憩時間の行動をこっそり観察する。

アメリカの先生はこの手の実験が好きだ。

さて、何が起こったかというと…。

・ただパズルをやったグループは、休憩時間もパズルを解こうとして頑張った。
・1ドルもらえるグループの学生のほとんどが、雑誌を読んだり、他のことを始めた。

デシ教授は、これを1975年に発表した。
これはえらいことだと思う。

パズルをやる面白さを、報酬のお金が消してしまったということだ。
これを専門用語で言うと、お金をもらうという外発的動機が、パズル自体の面白さという内発的動機を壊してしまった、ということになる。

自分が面白いと思って、自発的にでもやろうと思っている状況が、仕事をやる場合でも理想的な状況といえるだろう。
そこにお金が絡むと、それ自体を壊してしまう…。
それほど、お金というものの動機づけは強い、ということになる。

だから、お金に動機づけられてしまうと、仕事それ自体の楽しみを奪ってしまうということになる。
それほどまでに、お金の力は強いということだ。

そうなると、徹底的にお金で動機づけをして仕事をすればいいではないか、という意見がでる。
それは真実なのだが、お金にはあまりにも強い魅力があるので、中毒になってしまい際限なくお金が必要になる。
だから、お金では動機づけは難しいということだ。

ただ、仕事の面白さ、というものの中には、自分が他人の役に立っているとか、自分の裁量である程度決められる、という感覚も必要になってくる。
そうでないと、動機づけにはなりにくい、ということだ。

こんなことを経営学者はやっているらしい。
これは、高橋信夫という経営学の教授の受け売り。

これらを元に、高橋先生は成果主義や年俸制に反対し、日本型の年功制に戻れ、と言った。

客観評価は大事だが、それは評価者が責任を放棄することにつながりかねないし、上司が部下を評価するということは、上司の責任であり、それは当たり前のことだ、という。

至極まともなリクツだと思う。

こういう事をもっと教えないといけないのではないか。

内発的動機づけというような専門用語ではなく、人間の持っている「性」として。


| | 考えたこと | 21:39 | comments(0) | trackbacks(0) |
着陸間際
バッタもん、というのはよく似ているけれど安い、うさんくさい品物のこと。

前にも一度書いたが、ぼくらが小さい頃はそんな言葉はなかった。

80年代に香港に仕事で行った。
当時、まだ香港といえばいろんな高級ブランドが安く変える、と言われていた頃だ。
とは言っても、まともな店ではほとんど扱っておらず、いかがわしいところでしか買えないというような時代だった。

1週間くらいだったか。
客先のディーラーに?育をするというプログラムだった。
当時の香港はイギリスの支配下にあり、何となくエキゾチックな雰囲気があった。(その後行っていないので、今は何とも言えないが…)

ホテルのフロントでは、中国語を話しているのかと思ったら、中国訛りの英語だったり、屋台の店のすごい賑わいだったり、香港の漢字は日本人にもわかる漢字だったり、論語が書いて通じたり、いろんな事を思い出す。

とにかく、料理がうまかった。
後日行った上海より、圧倒的にうまい。(これも今はわからない)
接待でいいものを食べさせてもらったと思うが、それ以外にも屋台の朝粥などもおいしかった。

そこで仕事をして、帰路についた。

帰りの飛行機はエコノミーの3席つながったところで、ぼくは通路側だった。
内側の2人は、背広を着たサラリーマンで50代くらい。一人が手荷物でオシロスコープを持っており、一見して香港に何かの仕事で来たという風体。
一人が「社長」と呼び、もう一人が「部長」と呼ばれる人だった。
離陸早々アルコールを頼みまくり、上機嫌だった。
こう言っては失礼だが、エコノミーに社長と部長で乗っているということは、あんまり大きな会社ではないだろう。
当時はバブルだったが…。

食事も終わり、あと1時間くらいで着くという頃、二人はゴソゴソと荷物を出して話し始めた。

「しかし、これ高かったなあ」
「そうでんなあ。こんなん家族に見せたったら、びっくりしよるやろなあ」
「社長のは時間合わせとるんですか」
「合うてたで」
「よし、ぼくも合わせとこ。今何時でっか」

聞いていたら、どうも香港でブランド物の腕時計を買って、だいぶ高いものについたらしい。
もちろん、定価よりはだいぶ安いのだろうが。

チラッと見ると、社長の方が黒いクロノグラフで、部長の方が金のカルチェのような時計だった。
ぼちぼち伊丹が近づいてきて、シートベルト着用のサインが出た。
部長はまだ時計をいじっていて、話している。

「お、さすがに高い時計やなあ。あれ、時間合わそうと思たら、針が逆に回りよる。さすがに舶来もんは違うなあ。」

ぼくは吹き出しそうになったが、こらえた。
ああ、これはバッタもんを買わされたという事だ。

そうこうするうちに、「あ、取れた」と部長が言ったかと思うと、リューズが飛んだ。

もちろん、あんな小さな部品だから、なかなか見つからない。
おまけにシートベルトをしながら、探すのは大変だ。

「そんな、高い時計やのに、どないすんねん」
「こんなん、家で言われへん」

部長は半泣きだった。

「まあ、飛行機が止まってから探させてもらえや」

ぼくも足元を見たが、まったくわからない。
そのうち、空港について、シートベルト着用のサインが消えた。

部長と社長は、飛行機が止まってもリューズを探していた。
もちろん、ぼくは探すののジャマにならないように、早々に席を立った。

絵に描いたような気の毒な話だが、これは本当の話。

まだ香港でブランド品のバッタもんが売られていた時代。
今から思うと、あの頃はよかったと思う。

あの部長には気の毒だったが…。


| | 考えたこと | 00:22 | comments(0) | trackbacks(0) |