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2011.02.26 Saturday
自分という他人
関西弁では「あなた」のことを「自分」ということがある。
「自分、あの娘のこと、どう思てんネン?」 朝のドラマのひとこと。 お好み焼き屋のヒロインを思う鰹節会社の社長が、ヒロインと同じ下宿のマラソンランナーに尋ねた言葉。 ぼくは使ったことはないが、小学校のときから、そういうふうに「自分」という言葉を使う友達はいた。 だから、上の文章の意味はわかる。 ただ、これが標準語で書かれると、意味不明だろう。 こんな人称代名詞は珍しい。 自分で自分のことを自分というから、相手の立場に立って、あなたのことを自分と呼ぶ。 不思議な言葉だが、ニュアンスはわかる。 相手のことを「自分」と呼べるのは、精神的な距離が近いことの現われだと思う。 日本語の人称代名詞は、古いものがどんどん下品な言葉になってきたという歴史がある。 貴様とか、御前、手前というような「きさま」「おまえ」「てめえ」というような言葉は、昔は丁寧な言葉だったらしい。 場所をあらわす御前とか手前という言葉の仲間が貴方(あなた)だ。 貴方はまだ新しいのだろう。 しかし、「自分」という「あなた」は異色だろう。 日本語は面白い。 |
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