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2024.08.14 Wednesday
身長が低いクライマー
オリンピックでいろんなツイートが流れてくる。
中に、スポーツクライミングについてのものがあった。 壁の出っ張りを手で掴んで体を引き上げて、手と足で登るタイムを競うものだ。 ぼくは別にスポーツクライミングに興味はなかったが、メダル候補の森秋彩選手の記事を読んで、よく頑張ったと思った。 スポーツクライミングには複数の種目があり、オリンピックではスピード、ボルダリング、リードの3つの総合点で競われる。 スピードは「どれだけ速く登れたか」を世界共通のコースでタイムを競う。 決勝はタイムではなく2人で、速いほうが勝つ。 ボルダーは「いくつ登り切れたか」を競う。 高さ4〜5mほどで様々な傾斜がある壁にセットされた複数の課題(ホールドの配置で作られたコース)を登る。課題の最上部にある「TOPホールド」を両手で保持すれば「完登」。また、課題のおよそ中間部には「ゾーン(ZONE)」のマークがついたホールドが設定されていて、そこに到達できたかどうかも「ゾーン獲得数」として成績に反映される。 リードは「どこまで高く登れたか」を競う。 高さ12m以上の壁に設けられた1つの課題を、ロープを支点にかけることで安全を確保しながら登る。手で使用することが想定されたホールドに番号が振られ、上に進むほどその数は大きくなる。 この種目、森が金メダル候補だったらしい。 実際、リードでは1位だった。 ところが、第一課題のボルダーでは、スタートボルダーという最初に掴むところに手が届かなかった。 当然、スタートできていないから0点になる。 それでも、総合4位になった。 出場選手で最も背が低かったのだ。 イギリスのデイリー・メールは、 「「オリンピックのクライミングスターは、身長が壁まで届かなかったため、競技を始めることすらできず、ファンは彼女が『いじめられた』と主張している」と報じるなど、世界中で課題設定をめぐって身長が高い欧米勢に有利との指摘が殺到し、物議を醸している。」 と報道したとのこと。 多様性、多様性と言いながら、身長で差別し、手が届かないボルダーをセットするのはいかがなものか、と言いたいわけではない。 ぼくが感心したのは、森選手がそういう事態に陥っても、毅然としていたという事実。 彼女はパリに限らず、どこでも身長が低いことで不利なこともあったという。 インタビューでは、 「身長は関係ないと思います。リーチ的にも強度的にも、自分には不可能な課題にも挑戦して行けるところまで行こうと取り組んできたのが強くなれたひとつかなと思います」 彼女は高校を卒業して、プロにはならず、2022年に筑波大学に進学した。 その時に、こう話している。 「プロになってそれを仕事にして生活するとなると、やっぱり成績を気にしてしまったりすると思います。成績が直接お金にもかかわってくるから、いい成績を残さないと、と考えてしまいます。そっちが軸になるのが嫌でした」 「ちっちゃい頃から、あまり他人を気にしていなかったです。今もそうです。人にじゃなく、自分に負けるのが悔しいですね。だからクライミングでも、ほんとうに人に対して、というのではなく、試合の勝ち負けよりも壁に向き合うことがいちばんだと思っています」 毅然としていたのは、単なる強がりではない。 ロスでの彼女の活躍が楽しみだ。 |
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