考えたこと2

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サラリーマンになること
大学で勤めているとき、ある教授から「営業学」を教えたい、という話があった。
正式な話ではなく、世間話の話題だったが、よく覚えている。
この先生はすごくエライ先生で、言うこともスジが通っており、会議で誰かがあまりにも下らないことを言うとたしなめてくれる、いい先生だったとぼくは思っている。

その先生はキャリア教育にも一家言持っており、大学でのアカデミックなスキルがビジネスでも使える、という意見だった。
世の中が安易な「キャリア教育」というものに流れていく風潮をあまり快く思っていなかった。
それはぼくも同じだった。

先生曰く、卒業後ほとんどの学生がサラリーマンになり、営業という仕事についていくのに、学校ではそれが社会の中でどういう役割を持っており、どういう目的で行われ、どういう考え方を身につけなければいけないのか、というようなことを教えたいということだった。
各論ではなく、総論で「営業の意義」みたいなものを伝えたいという思いだったと思う。

そういうことをやるなら、実際に企業で働いていた人や現役で働いている人を呼んで話を聞き、構想を立てないといけないでしょうねぇ、というような事を言ったような気がする。
一度だけした世間話だった。
もう先生は任期が迫っていたので、現実にはならなかったが…。

ちょっと前に、NHKが女子高生の貧困問題を取り上げ、それが炎上騒動を起こしたということがあったらしい。
記事には、彼女は貧困環境であるにもかかわらず、夢である「アニメーションの仕事に就きたい」という望みが叶わない事に不満を言っていたことなどに、批判があったらしい。

記事にもあるが、素人ができるアニメーションの仕事というのは、とても単価の安い仕事であり、それをどうしてもやりたいのなら貧しくても我慢するという類の仕事。
それを自ら選択したのなら、それは仕方がないということだろう。
そこに不満を言ってはいけない。
それは彼女が悪いのではなく、回りの大人が悪いのだと思う。

大学生でもそういう学生はいる。芸術系は多いだろう。
「ミュージシャンになりたい」というような学生はあまり相談に来ないが、アルバイトで生活し、ギターと歌をストリートで演って、認められデビューしたい、というタイプだ。
そういう学生が来たら、覚悟を聞き、どうしても本気でやりたいのであれば年限を切って活動し、ダラダラ続けることだけはやめよう、と言うようにしている。
時間を区切って、本気で頑張ったのならダメでも諦められるはず、ということだ。
そして、ちゃんとした仕事について、趣味で続ければいい。

結局、夢を実現するためには頑張るしかないということだろう。もちろん運もある。
だから、ほとんどの人は夢をあきらめて他の仕事に就く。
小さい頃の夢を実現したというような人は、ほんの一握りしかいない。
芸能界に入りたいとか、プロのスポーツマンになりたいとか、イラストレーターになりたいとか、バンドを組んでメジャーデビューしたいとか…。
たいがいは、20歳になったころには自分でわかるはずだ。

今の先生方は夢を煽っているような気がする。
夢を持つのはいいことだ、とぼくも思うが、それも限度がある。
どこかで現実を知らないといけない。

前にも書いたが、今の中下位の大学のパンフレットはとにかく資格志向だ。
この学部に入ったらこんな資格が取れるというののオンパレード。
でも、実際に資格を取って就職できる人はほとんどいない。
教員免許ですら取得しても採用試験にうからなかったりする。
もっと現実を見せないといけない。

この記事にもこう書かれている。

「正に「生きる力」の養成がキャリア教育であり、そのためには情報のリテラシーからメンタルタフネスまで、自分自身が社会に揉まれながらも生存する、技術なり思考なりを身に付けさせることが欠かせないといえます。しかし一方学校教育現場では、「夢をかなえる」式の説話がいまでも蔓延していると感じます。例えば小学校や中学校などで社会人の話を聞く催しがありますが、私が知る限りの狭い範囲ですと医者や弁護士、公務員の方が来ることはあっても、工場労働者、サービス業で店頭に立つ人、営業職で一日中走り回る人はなかなか登場しないようです。」

「キャリア教育で実際に働く大人の話を聞くことは非常に有意義です。しかしそこで聞くべき話はまず第一にリアルな社会を代表するべきです。それは会社員です。世の中の会社員の半分以上が何らかの形で営業職・営業関連職に就いているにも関わらず、営業の仕事が何かをきちんと知っているのは大学生でもまず見たことがありません。」

やっぱり、あの先生はエラかったと思う。

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