考えたこと2

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アリス・ゴフマン
TEDでアメリカの社会学者、アリス・ゴフマンのプレゼンを聞いた。
彼女はWikipediaによると1982年生まれだから今34歳。
すごい若手の学者だ。

アメリカの受刑者数はこの40年で7倍になった。
人口10万人あたり、716人の受刑者がいる。
これはOECD諸国の中でダントツ1位。
2位は約200人のポーランドやチェコだから、2位に3倍以上の差がついている。

受刑者の多くはアフリカ系やラテン系の若者だ。
彼女はペンシルベニア大学の時に、近くの女子高生の家で家庭教師を始めた。
その少女のもとに少年院から15歳の従兄弟が帰ってきて、その子の物語を卒論にしたという経歴。
実際に犯罪が多い地域に住み、そこの子供たちがどういう行動をして、どうなっていくかを調べた。

黒人の多い地域に住んで警察が住民を取り調べたりするのを記録し、18ヶ月の間にそういうことがなかった日は5日しかなかったという。
逮捕した後に、殴る蹴るの暴力をふるうところを見たこともある。

そしてチャックとティムという18歳と10歳の兄弟の悲惨な出来事の話を始める。
一度何かで訴訟を起こされ、刑務所に入るとその後の人生が狂い始める。
裁判の費用(数百ドル)が容赦なく請求され、それを滞納するとまた犯罪者になる。
豊かな地域では取るに足りないようなことでも、そこでは犯罪になってしまう。
学校内の喧嘩が、加重暴行罪になってしまうのだ。

でも、そのおかげで犯罪率が減ったではないかという人もいる。
実際90年代、2000年代を通じて犯罪は減った。
しかし、それは低所得地域の厳罰主義によるものとはほとんど関係がない、と全米科学アカデミーが発表したとのこと。

彼女は刑事司法制度を変えるべきだと主張する。
黒人の若者をもっと信頼し、救いの手を差し伸べるべきだと。
会場から拍手が起こった。
でも、全員が拍手しているわけではない。
じっと見ている人もいる。
それほどこの問題はややこしいのだろう。

スラム地域の黒人の犯罪率は実際に高い。
しかし、それがこの刑事司法制度の結果とも言える。
オバマ大統領は、服役率の人種間差別をなくすような手段をとりはじめた。
刑務所を閉鎖し、教育にお金をかけ始めた州もでてきた。

最後に彼女は「今の若い人たちのミッションは、膨大な数の人々を投獄するのをやめ、正義に重きを置く新たな刑事司法制度を作ることなのだ」と締めくくった。

最後はスタンディングオベーションになった。
でも、複雑な気持ちで聞いた人もいるんだろう。
世の中にはそうするべきだと思っていても、一時的な傷みを我慢できない人もいるし、実際いろんな問題があってなかなかできないこともある。

しかし、そんなことは世故長けた年寄りの理屈だ。

三十代の若い社会学者の彼女には、そんなものは障壁にならない。
作るべき社会はそういう社会でなければならない、という若者の強さがあふれている。

アメリカにはいろんな悪いところもあるが、こういう若い学者がいて、自分の主張をみんなに伝えることができるのはすばらしいと思う。

日本の若者も頑張れ。

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