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2012.04.27 Friday
アナログとデジタル
ぼくが会社に入ったのが1979年。
実験室での実験が仕事だった。 ちょうどアナログの計測器が終わり始めた時代。 そして、デジタルの計測器が出てきはじめた時代。 アナログの計測器は大変だった。 朝、実験室の前を通るときにスイッチを入れて、暖め始める。 1時間は暖めないと、途中で計測値が狂う。 キャリブレーション(基準信号を入れて、値を合わせること)をやるのも大変だ。 XYレコーダーという機械に書かせて、合わす。 合わすというのは、基準の値のところにペンがいくようにするのだ。 書くと簡単だが、当時この作業をやるのは職人技だった。 ぼくは比較的飲み込みが早かったほうだと思う。 何せ、50センチX30センチくらいの盤面に、スイッチ、ボリューム、ランプなどが100個くらい並んでいる機械だった。 そのうちのいくつかのスイッチを上げたり下げたり、ボリュームを回したりしてペンの位置を合わす。 だいたい、意味などほとんどわかっていない。 何をやっているのかという意味がわかったのは、その仕事をして何ヶ月か経ってからだった。 最初は朝から計測器をいじり始めて、昼からやっと測定、という状態。 数ヶ月経って、やっと朝から始められるようになった。 そんなことをやったのはぼくが最後。 入社2年目くらいで、デジタルの測定器が出てきた。 初めて使ったときはなんと便利な機械だろうと驚いた。 値段も当時のアナログ機器を買った値段より安い。 その後、ぼくの使っていたアナログの機械は捨てることもできず、結局計測器の墓場に行った。 何年か後に捨てられたと思う。 それからだんだんとアナログ機器がデジタル化された。 2000年にはもうデジタル化できるものは、されてしまった。 値段もかなり安くなった。 いざ、そうなってしまうと、あまりに簡単に設定できすぎて、やっている人が設定の意味がわからなくなっていることに驚いた。 これを測るときはこうする。 こちらを測るときは、こうする。 単にスイッチを覚えている方に切り替えるだけだ。 こうなって、初めてアナログの良さに気づいた。 アナログ機器は使う人にやさしくないが、使い方を覚える段階で、自分のやっていることの意味を理解せざるを得ない。 それはいいことだった。 計測は正確になったし、値段は安くなったし、ウォームアップも要らない。 しかし、便利になることがいいこととは限らない。 なるほど。 こういうのをフリーランチはない、というのかもしれない。 |
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