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2008.04.06 Sunday
文学的なメニュー
西洋料理の名前は難しい。
パスタなら、ペスカトーレとかカルボナーラとか、決まった名前がある。 でも、メニューのところに材料とソースのベースになるものが書いてあったりするし、パスタとわかっていれば、まあなんとかなるだろうと思う。 海外に行ったときにワケのわからない名前だと困る。 夜遅く空港について、機内食も食べたし、ずっと狭いシートに座っている状態だから、あまり食欲もないし…というときに、ホテルのレストランに滑り込みで入り、ちょっとお腹に入れたいということがあった。 英語のメニューだから、だいたいはわかるはずなのだと思ったら大間違い。 そのレストランにはパスタが1種類しかなくて、その名前が「天使のヘア」というヤツだった。 ぼくは遠慮しておいたが、パスタだから大丈夫だろうと頼んだ人は気の毒だった。 大皿に山盛りのパスタが出てきた。 なるほど、白一色で、天使のヘアみたいな外観。 塩水でゆでたパスタをそのまま持ってきたような料理だった。 あっさりを通りこして、味がないのだ…。 仕方ないので、さらに塩をかけて食べていたが、あれは不思議な料理だった。 「天使のヘア」という名前にこだわって作られたのだろうか。 フランス語のメニューはさらに困る。 仏和辞典を片手に、メニューと格闘する。 聞いてもわからないので、辞書を引くしかない。 あんまり待たせても悪いし、根拠はないが何となく良さそうな感じのものを辞書で引く。 ところが、いざ訳してみると「水夫の食べ残し」などという名前。 文学的すぎて、どんなものが出てくるかわからない(たぶん、シーフードだとは思ったが)。 料理を持ってくるまで、ドキドキである。 牛肉のグリルとか、鶏肉のナントカ風炒め物とか、そういう名前にしてもらうとありがたいのだが、料理する人にとっては、芸術的な営みでもあり、「天使のヘア」などは傑作なのかもしれない。 スリルを感じながら待つのも楽しみの一つでもあるが、コトバが通じなくて困る大きな問題の一つは、文学的なメニューではないかと思う。 |
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