![]() |
2024.06.10 Monday
新しい鬼平
新しい鬼平犯科帳が始まっている。
毎週やるわけではないが、シーズン1ということで松本幸四郎が主人公鬼平に扮している。 過去にもいろんな人がやったが、ぼくにとってはまだまだ中村吉右衛門が鬼平だ。 新しい鬼平犯科帳は、ハードボイルドを意識しすぎてユーモアがない。 そのうち、キャストやスタッフが慣れてきて、そういう感じも出せるのかもしれないが、吉右衛門の鬼平とはちょっと違う。 音楽も重めのものになっていて、軽さがない。 中村吉右衛門の鬼平を意識しているのか、立派な鬼平になろうという気持ちが強すぎるのかもしれない。 鬼平犯科帳は全部読んだが、池波正太郎が描いた長谷川平蔵は、若い頃に「本所の銕」と呼ばれて遊び人だったというところが大きい。 初代の鬼平は中村吉右衛門の伯父にあたる松本白鸚、2代目は丹波哲郎、3代目が萬屋錦之介、4代目が中村吉右衛門だ。 丹波哲郎と萬屋錦之介は「遊び人」の感じがなかった。 初代はまだマシだったと思う。 でも、中村吉右衛門の鬼平がベスト。 だからこそ、ドラマが長く続いたのだと思う。 遊びが高じて、盗人の手伝いをしそうになったが、それを止めさせたのも盗人だったというエピソードもある。 そういう鬼平を感じさせたのは、やっぱり吉右衛門だ。 この時代劇の見どころは、鬼平とその配下の密偵の関係だ。 もともとは盗人だった密偵たち。 そういう暗い過去を持った密偵と、その気持がわかっている鬼平とのつながり。 鬼平の名言の一つがこれだ。 「人間というやつ、遊びながらはたらく生きものさ。善事をおこないつつ、知らぬうちに悪事をやってのける。悪事をはたらきつつ、知らず識らず善事をたのしむ。これが人間だわさ」 火付盗賊改と盗人の間には、同じものが流れている、という人間観。 これがまだ5代目には出てきていない。 5代目の松本幸四郎がこれからどう化けるか。 それが出てくると、本物だと思う。 |
![]() |