考えたこと2

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大学改革を邪魔する教員
日経ビジネスに、沖縄科学技術大学院大学の記事があった。
イギリスで発表された「質の高い大学」で日本で最高の評価を受けたとのこと。

開学10年足らずの沖縄科学技術大学院大学(OIST)がなぜその快挙を成し遂げたのか、ということについて、開学当初から関わったという元東大総長に聞いている。
元東大総長というのは有馬氏で、物理学者。1953年に卒業して、原子核研究所の助手を経て海外で学び、75年に東大の教授、89年から4年間総長をやったという経歴。小渕内閣で文部大臣も経験している。

彼は東大の総長になった時に、大学改革をしようと思ったが、大変だったらしい。
当時は教授会の力が強かったからだ。
今はだいぶ弱まったが、教授陣の改革に反対する力は強い。
これは文科省も気がついていて、大学のガバナンスで教授会の権力が強すぎるということで、私学についてはだいぶ弱めるように指導された。
彼は言う。

「私は、東大総長に就任して、「大学の国際化」を推進しようとしましたが、まったく駄目でした。教員に占める外国人の割合を増やしたり、理学部の一部の学科で外部評価委員に外国人を入れようとしたりしましたが、反発を受けました。欧米の一流大学を見ると、教員の3割は外国人なんですね。少なくとも2割を外国人にしようとしましたが、自らを守ることを重視しがちな教授たちの抵抗を受け、結局、私が総長を退くころになっても外国人の割合は数%程度にしかなりませんでした。」

だいぶ言葉を選んでいるが、「自らを守ることを重視しがち」という言葉は重い。
同業の人でも思うくらいだから、事務から見たら、本当にそう思う。
こちらは攻撃する意図などなくても、そう思って攻撃してくる人が多かったのは事実。

自分がつける成績は絶対だが、自分が評価されるとなるとすごく抵抗する人は多かった。
FD(教育改善)の講演会をやっても、その場では「ぜひ取り入れたい」等話すが、実際に取り入れる人はほとんどいなかった。

またアメリカでは授業さえしっかりやっていれば、若いから、日本人だからといって差別なく、研究費はふんだんに出るという。
日本の文系では、過平等主義になっていて、どんなに頑張っても、サボっていても一律に出していたりする。
以前、研究計画を立てて、研究費を配分するということを却下されたという記事を書いたが、そういう具合なのだ。

その分、授業に対する評価は厳しい。
これも日米で違うところ。

「40歳を過ぎて初めて教授になった最初の講義には、大先輩の教授が私の教室にやってきて授業の中身を聞いていました。米国では、大学教員は研究だけでなく、教える力も問われるためです。授業が終わると、先輩の教授から「講義の声は大きい方がいい」「板書の文字は分かりやすく」といったアドバイスをくれます。日本で同じことをしたら、「講義の権利がある」と反発されましたね。」

これは、アメリカの学部長の役割、という研修を聞いたときにも言っていた。
その研修では、実際にアメリカ人の学部長経験者が話してくれた。
学長の役割は金をとってくることで、学部長の役割はその学部の将来像を描き、所属教員の研究分野まで口を出し、その教員を先生として育てる、ということだった。

ぼくのいた大学ではそんなことはあり得なかった。
だから、学部改組のときに困ったのだ。
学部名を変えるのなら、教育内容を変えないといけない。
教員は自分の研究分野は変えたくない。それが、学生のニーズがなくても、変えないのだ。
そうなると、新学部のカリキュラムはどうしてもウソになる。
日本の学部改組は、そういうウソの上に成り立っていることが多い。

OISTでは、アメリカの良いところを取り入れているという。
そのおかげで、ドイツのマックス・プランク学術振興協会の会長が学長で来てくれたという。
ドイツで、マックス・プランク学術振興協会会長というのは、大臣よりも位が高いらしい。
結局、日本の大学改革を邪魔しているのは、教員のギルドなのだ。
そうは書いていないが、きっとそう言いたかったのだと思う。

ぼくが10年間の大学職員の仕事で思ったのは、学校の価値は先生で決まる、ということ。
設備でも、規模でも、入試の成績でもない。
学校の価値はそこにどれだけの「いい先生」がいるかだけだ。

そうすれば、良い学生も集まってくるし、良い研究もできる。

それをOISTは証明しているのだと思う。




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