考えたこと2

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大学のレベル
昨日書いたヤマザキ学園大学の続き。

今年の2月に新聞にこのヤマザキ学園大学のことが載った。
アフターケア、という業界用語がある。
これは文部科学省が認可申請を許可した大学に対して、4年間毎年行うチェックのことだ。
そのアフターケアで、この大学がひっかかっり、文部科学省から指摘事項がついた。
正確には、文部科学省が委託した学者たちが指摘したということになる。
大学の授業内容にふさわしくない内容がある、というのが指摘事項だった。
これはぼくが知る限り、文部科学省がはじめて大学の教育内容の低さに言及した、記念すべき出来事だと思う。

4月26日の読売新聞の「ニッポンの分岐点」という特集に載っていた。
記事にはこうある。

『be動詞は中学1年で習う英語の基本。だが、平成22年に開学したヤマザキ学園⼤(東京都)の
動物看護学部では、必修科目「イングリッシュスキルズ(基礎)」でbe動詞などを学ぶ内容があ
ったことが判明。文科省は「大学教育にふさわしい水準となるよう内容を修正し、必要に応じ正
課教育外での補習教育を整備すること」と注文を付けた。これが報じられると、ネット上には大学教育にふさわしくないなどとする非難の声が集まった。』

これに対してヤマザキ学院大学は『「この科目は大学レベルの教材を使用しており、be動詞の活用を学ぶのはその中の一部」とし、「一部報道などには誤解もみられる」と反論する。一方、改善要求にある補習教育は、新入生対象の学力テストで基準点に達しなかった学⽣を対象に、正課外の講座という形で5月から実施する予定』と答えている。

2011年だから、今から5年前、日本橋学館大学の授業内容が、「アルファベットの書き方」「分数の計算」「原稿用紙の使い方」といった大学以前の教育内容だということで、ネット上で騒がれたことがある。
その時は文科省は何も言わなかった。
なぜか。
そんなことはわかりきったことだったからだ。
さすがに、文科省の役人は今の高校卒業生のレベルを知っていたのだろう。

文科省の調査の時に「リメディアル」という言葉が出てくる。これも業界用語。これは高校までの内容の「学び直し」ということだ。
今や「日本リメディアル学会」という学会まで存在する。
その学会の調査によると、7割の大学でリメディアルを実施しているということだ。
2005年に文科省の調査で実施している大学は3割だったから、大学教育にふさわしくないという声を発する人にとっては、状況は悪化しているということだ。

ヤマザキ学園大学や日本橋学館大学の言っていることは一理ある。
大学に入ってくる学生のレベルが低いから、リメディアルが必要だ、ということだ。
大学が教育の最後のチャンスだから、ウチがやらないでどうするのか、という気概は立派だと思う。

しかし、こんなことはいつまでも続けられるものではない。
修得すべき時に修得すべきことを修得するというのが、世の中の常識。
リメディアルをやっている大学が7割というのは、初等、中等教育がまともに機能していないからではないのか。
それを正面切って言う大学がいない。
結局補助金が欲しいということだろう。
文科省が怖いのだ。

大学進学率が上がるにつれて、リメディアルが必要になってくるのはわからないことはない。
しかし、それにも限度がある。
入試をやっているのだ。
入試をやって、入学者を決めている。
リメディアルが必要な学生が「新入生対象の学力テストで基準点に達しなかった」というのはどういうわけなのか。
それをよく考えないとイケナイ。

これは、「新入生対象の学力テスト」と「入試」が違うものだということだ。
そんなダブル・スタンダードを設けて、どうするのか。
もともと、「新入生対象の学力テスト」に通らない学生は落とし、学力が十分な学生を選抜するためのものが、大学入試ではなかったのか。
格好いいことを言っているが、結局は入学生を集めたい、それだけだ。
これを指摘した記事を見たことがない。
そんなことをやっている大学に、文句を言われる筋合いはないと文科省は思っているのだろう。

すでに、偏差値が50以下の大学では入試は成立していないという声もある。
そして、その対象になる学生は入学する学生の半分以下だ。
それ以外はAOや推薦で入っているのだから、推して知るべしである。
もちろん、高校も大学もマジメにやれば、入試の形態は問わない。
AOや推薦でも全く構わない。
だが、多くの大学ではAOや推薦をマジメにやっていない。
高校も同じ。就職したほうがよい学生を進学させている、というのはこないだ書いた。

それもこれも、高校の評判と大学の経営のためだ。
進学率を上げるのと、入学者を確保しないといけない、というのが最優先になる。

だから、「新入生対象の学力テスト」をもう一度やっている。

日本には資源がないと習った。
人材が全てだということだった。
人材を育てるために教育がある。
それがこんな状態でいいのだろうか。

遅々たる歩みだが、高校卒業時の到達度テストなどといういい方向の意見も出てきている。

でも、遅すぎると思う。


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