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2013.12.28 Saturday
アルバイト先にだけは就職したくない
大学生たちに「アルバイトをしているか?」と聞くと、8割ほどが「している」という。
重ねて、「アルバイト先に就職することも考えているか?」と聞くと、全員が迷いなく手を下げる。 これに関しては本当に迷いがない。 普段はあまりはっきりした意思表示をしない彼らが、この場合は明確に意思表示する。 能動的に挙げた手を下げるのだ。 これはどういうことか。 アルバイト先のことは、店長など正社員に聞いてわかっているからだと思っていた。 どこでも正社員はシンドイ。 だいたいは、外食や流通小売関係。 どこに行っても正社員はシンドイということを知らないから、バイト先に就職したくなくなる。 でも、最近どうもそうではないような気がしてきた。 彼らの「ここでは働きたくない」という気持ちがあまりにも強いからだ。 単に「実情がわかっているから、やめておこう」という感じではない。 たいがいの学生は、「なぜイヤなのか」と聞くと「とにかくバイト先だけはイヤ」と答えることが多い。 この言葉にはその業界というよりも、「バイト先」そのものを嫌っている、というニュアンスがある。 時には彼らの言葉には「バイトをさせられている」という感じすらある。 自分で選んでバイトをしているにも関わらず、だ。 バイトにも選考があって、もっと他のバイトをしたかったが、そこでしかできなかった、ということもあるかもしれない。 それでも、途中で変わることもできたはずだ。 実際、積極的にいくつものアルバイトをする学生もいる。 仕事を体験してみたい、という学生だ。 そういう数少ない学生は、アルバイトというものを肯定的にとらえている。 しかし、積極的に手を下げる彼らは、アルバイトを自分で選んでおいて、そこだけは就職したくない、という非常にネガティブな気持ちを持っている。 今の日本の外食・流通業界は、コンビニ等のIT武装した業界が出てきて、価格を下げないと生き残れない、という状況だろう。 離職率も高い。 大学生のアルバイトは業界にとって格好の労働力になる。 IT化がそれを加速した面もある。 レジスター、バーコードリーダー、無線端末など、スキルを磨かなくても仕事ができるようになってきた。 90年代にインターネットが発達し、2000年代になってそれが端末にも展開され、大学生でも出来る仕事が増えた。 時はちょうどデフレで、価格を下げる圧力が働いたはずだ。 学部だけで220万人いる大学生。 店によっては店長以外みんなバイトやパートというところもある。 普段はバイトやパートしかおらず、店長が時々来るという店すらある。 何か起こったらどうするのか、と心配になる。 結局は大学生を安価な労働力としてとみているからだろう。 だから、彼らもそういうふうに扱われるのは不本意だし、「そんなところで働きたくない」と思う。 しかし、こんなことを続けていて良いのだろうか。 こんな状態だから、冷蔵庫の中に入って写真を撮り、インターネットにアップするバイトが出たりするのではないだろうか。 ぜひともバイト先に就職したい、この会社はいい会社だ、などと思う仕事をさせないでいいのだろうか。 彼らの最初の就業体験を、ネガティブなものにしていいのだろうか。 日本の就業者数は6366万人。 大学生の7割がアルバイトをしているとして、150万人ほど。 人数はしれているが、彼らの将来は長い。 これからの日本を支えないといけない労働力だ。 彼らを使い捨ての安価な労働力としてだけ見ていて、本当にいいのだろうか。 ヨクナイと思う。 |
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