考えたこと2

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卒業予定者数
今朝の読売新聞に、「大学の実力」というのが出ている。
今年で8回目を迎える、読売の企画だ。
日本中の大学にアンケート調査を実施している。
毎年項目が増え、わりとちゃんとしたものになった。
文科省も同じようなことをやろうとしているから、その予行演習みたいなものになったんだろう。
関西版には近大が全面広告を最終面に出している。
結構広告料は高かったんだろうなあ。
お決まりのマグロが、火山から顔を出している。

こういう数字が誰でも見られるようになるのは、いいことだ。
情報公開すれば、淘汰は進む。
実際、今回のアンケートに答えていない大学は、間違いなく経営状態が悪い学校だろう。
だからこそ、文科省も公式に作ろうとしている。
新聞社のアンケートなら、答えないという選択肢もあるが、補助金をもらっている監督官庁なら出さざるを得なくなる。

昔はそんなものは考えられなかったが、それだけ大学数が増えて、質が問題になったということだ。
ぼくが大学に入学した昭和50年には420校だったが、今は781校になっている。
ほぼ倍になったということだ。
もちろん、進学率も上がっているのだが、数年前から入学定員と高校を卒業して大学に進学する希望者の数はほぼ同じ、つまり理論上どこかの大学には入れる、という「全入」状態になっている。
もちろん、これは入試を通ればの話。
だが、悲しいかな、中位以下の大学では入試は機能していないところが多い。
AOや推薦が増えて、学力が問われなかったり、一般入試でも入学定員を優先して合格を出している大学が増えているからだ。

ぼくは大学で就職支援の仕事をしていたから、卒業生のことが気になる。
「大学の実力」には卒業生の進路も出ている。
「卒業予定者数」「卒業者数」「就職者数」「進学者数」の4つ。
この中の「卒業予定者数」だけでもいろんなことがわかる。

卒業予定者数はその年度に最終学年に在籍した学生の数ということになっている。
わかりにくいが、5回生、6回生なども含まれるということだ。

この人数と、卒業者数の差を見てみる。
この差が大きいところは、4回生になるまでにチェックをちゃんとやっていない大学だ。
必修科目があって、厳しく成績をつけ、最低限の勉強をしないと上の学年に上がれないという仕組みを持っていれば、必然的にその差は小さい。
昔は教養と専門で分かれていて、3回生になる時にハードルがあったと思う。
今はそんなものがなかったり、そもそもノーチェックの大学もある。
極論すると、0単位でも4回生になれる大学があるということだ。
なぜ、学年進行時に厳しくしないかというと、退学率が上がったり、それによって学費が入ってこなくなったり(こっちの理由が大きい)するからだ。

今の学生は友だちが一番大事だから、落第、ということを嫌って退学するのを恐れるんだろう。
今は成績はコンピューターで管理されているから、事務的にはやろうと思えばすぐにできる。
なぜそれをやらないのか、ぼくは不思議だったが、ぼくのいた大学の教授会は学生に厳しくすることを嫌った。
本来、学生の自己責任に属することだからだ。
それは学生や保護者に対しては気の毒なことなのだが…。

ちゃんと入試をやって、学生のレベルを把握し、汗を流して学生を育てようとしている学校なら、学年進行時にハードルは設けるだろうと思う。
少なくとも、1回生の必修を落としたまま4回生になる学生はいないだろう。

卒業要件の厳しい学校もあるにはあるだろうが、だいたい、ちゃんと4回生になった学生は卒業出来るようになっているはずだ。
中には、自ら単位を落として留年するという選択肢もあるにはあるが…。

結局、「卒業予定者数」というのは、そういう学校の熱心さも表している。
卒業できなかった学生が多い学校は、汗を流して教育に取り組んでいない、という傾向があるはずだ。

いくらいい加減に入試をやっても、ここでツケを払わないといけない。

先生方がマジメに汗を流して学生を教育すれば、ちゃんと学生は応えるのだと思う。
でも、そんな先生は非常に少ない。

それを表しているのが、実力調査の学習支援のところにある。
「課題添削」という欄だ。
これは、「授業で提出させた小論文等を添削して学生に返却するよう、学部として教員に促しているか」というもの。
実際にやっているかどうかは別として、「促す」だけでいいのだが、ここが空欄の大学が非常に多い。
これをちゃんとやってくれると、就職の時には間違いなく有利。
誤字脱字をなくし、文章の「てにをは」を直し、まともな文章を書けるように指導しておけば、エントリーシートで苦労することもない。

要するに、卒論の添削を除くと、高校を出た後、添削されて答案が返されるという経験をしない学生がほとんど。
だから、「私の成績、なんでこんなにいいのか」と驚く学生がいるのだ。

添削・返却は本当に大変な仕事だと思う。
でも、講義やゼミをやるだけが先生の仕事ではない。
出したもののフィードバックをしないと、成長しない。
特に下位の大学では、小中高の学び直しなのだから、ちゃんとやらないとイケナイ。

と、口を酸っぱく言っても、「何人の授業をやっていると思っているのか」といわれるのがオチ。
中には「面倒くさい」という先生もいた。
そんなことをしていたら、研究ができない、ということだ。
そういう先生に限って、論文は全然書いてなかったりする。
でも、そういう事項は教授会マターなのだ。
よほど強権の理事長がいたり、学長がいたりしないと、「自由の府」である大学ではそういうことはなされない。

だから、文科省は情報公開を進めて、そういう教授会を何とかしようと考えているのだろう。
もう手遅れの感はあるが、やるにこしたことはない。

でも、ぼくはそう簡単に変わらないと思う。



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