考えたこと2

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年をとる
年をとるのを意識するのは、どんな時だろう。

年齢が増えていくことが年をとることなのだが、それはあくまで物理的な基準でしかない。

20歳、30歳、40歳、50歳と年をとってきたが、20歳から30歳は(今から思えば)そんなに年をとったという意識はなかった。
単に、二十代ではなくなる、という寂しさくらいだった。

40歳はちょっとこたえた。
十代の頃に想像できるのが、30歳くらいまでの自分だったような気がする。
それを越えてしまったという感じ。
自分が40歳のおじさんになるとは、思わなかったという感慨。
でも、結果的にはまだ若い。

50歳は本当に年をとったと思う年齢ではないか。
否応なく意識させられるのは、老眼鏡。
近くの文字が見えない。電車で本が読めない。
ひょっとしたら、もともと眼鏡をかけている人はそうでもないのかもしれない。
ぼくは全く眼鏡をかける習慣がなかったので、本当に不便。
その不便さが年齢を意識させる。

もう一つは、疲れだろう。
身体を使うと、2日後にくる。
何で痛いのか、わからない。
この感覚は、きっと40代の人にはわからないだろう。
最初は、次の日に何ともないので、大丈夫…と思っているだけに、2日目はこたえる。

覚えているはずのことが出てこない。
あれ、あれ…といいつつ、思い出せない。
役者の名前や映画のタイトル、作家の名前や本の題名、昔の友だち…。

そんな些細なことで不便だったり、困ったりすることが、一番年齢を感じさせる。
それが年をとるということかもしれない。


でも、これは自分がまだ51歳だからそう思っているのであって、きっと60歳になったら、50歳など若い若い…と言うのだろう。
今から想像できる。

もうこれからは、坂を下っていくばかり。

いいことも書いておこう。

いやなことは、忘れやすくなった。
何かをあきらめることに寛容になった。
少しは世の中のことがわかってきた。
でも、わからなくてもいいや、とも思えるようになった。
永遠とか、無限とかいう言葉より、そのうちとかぼちぼちとかいう言葉がよくなった。
神さまに親近感が出てきた。
思っていてもできないことの方が多いことがわかった。
人生が有限であることがわかった。
自分がロクでもないやつだとわかった。

年をとったという意識は、いい方にもあるということで、引き分けか。

どれが勝ちで、どれが負けで、どれが引き分けなのか…よくわからないけど。


| | 考えたこと | 23:13 | comments(0) | trackbacks(0) |
雪国
国境の長いトンネルを抜けると、そこは雪国だった…

今、「お言葉ですが」という高島俊夫のシリーズの最新刊(文庫)を読んでいるが、その中に川端康成の「雪国」の英訳が出てくる。
それ自体が話題ではなく、本では「国境」を「こっきょう」と読むのか、「くにざかい」と読むのか…ということが話題になっている。

ぼくが面白かったのは、その読み方ではなくて、この英文そのものだった。

この、有名な「雪国」の書き出しの部分は英語では、

 "The train came out of the long tunnel into the snow country."

と訳されているとのこと。

普通の日本人なら、この部分の主語は"I"になるのではないか。

どう考えても、この部分は汽車に乗っている人の思いが書かれているのだと思う。

「私は長いトンネルを抜けて、汽車が雪国に入ったことに気づいた」というような英文が自然だと思う。

もちろん、英訳をした人は英語を母語とする人だろうし、日本語にも通じている人だろう。

その思いもわかった上で、この英文が自然なのかもしれないし、ひょっとしたら「私は…」というニュアンスを含んでいるのかもしれない。

それでも、どうも納得できない。

こういう事例をみると、一つの言葉をもう一つの言葉に置き換える(翻訳する)という作業は、とても難しい…というより、不可能なのではないかと思ってしまう。

それが文学だから…、だとは思うのだが。




| | 考えたこと | 00:03 | comments(0) | trackbacks(0) |