考えたこと2 | エネルギー・マゾヒズム

2021.10.29 Friday

エネルギー・マゾヒズム

エネルギー・マゾヒズムという言葉がウォールストリートジャーナルの社説に出ていた。
欧州のエネルギー危機のことを書いている。
欧州自らが招いた破滅的状況、という文字が踊っている。

ロシアのプーチン大統領は強気で出てくるだろう。
ロシアが供給しないと、欧州には天然ガスが足りない。

欧州のエネルギー価格は1年前に比べて、5倍になったとのこと。
どこまで欧州各国が耐えられるかだろう。
この冬は無事越せるのだろうか。

ロシア側は政治的譲歩が危機の緩和につながる、ということを言っている。
それは、新しいパイプラインを引いてロシアへの依存度を更に上げたり、現行のパイプラインがウクライナを通っており、通過料を払うのをやめたいという意図だ。
その条件を飲むのなら、供給を増やしてやろう、ということになる。

まさに、エネルギー安全保障というのは、こういう事態を招かないためにやらないといけない。
食料もそうだが、今やエネルギーがないと何もできない。
全ての産業のもとになるのが、エネルギーなのだ。

再エネ原理主義者はそれを全て再エネで賄おうと、補助金目当てで言うが、そんな無責任なことはできない。
夜間は太陽光は発電できないし、風力は風まかせだ。
再エネにはそうなった時のためのバックアップ電力が必要なのだ。

日本人は電気はいつでも使えるもの、と思っているが、これだけ停電がない国は珍しいのだと思う。
2012年の世帯あたりの年間の停電時間は、たった16分。0.003%だ。

ぼくは中国に80年代末に中華人民共和国に行ったことがある。
鄧小平の時代。中国の近代化の勃興期だった。
当時、いすゞの自動車工場ではしょっちゅう停電があって困る、という話だった。
でも、世界の工場となった今はだいぶマシになっているのだろう。
電気代は日本の半分だと聞く。
日本は震災後、再エネの支援などが付加されてどんどん高くなっている。
これでは産業が衰退するわけだ。

日本は欧州に付き合って、2030年までの温暖化ガス46%削減目標を約束し、気候変動対策でさらにエネルギーコストを上げようとしている。
実際、もう化石燃料の価格は上がっており、ガソリンも上がった。

ウォール・ストリート・ジャーナルの社説は、明らかに気候変動対策は行き過ぎだという論調。
記事はこう締めくくっている。

「達成不可能な気候対策目標という名の下で、自らに損害を与える欧州の姿勢は、歴史上、最も深刻な民主主義に基づく自己破壊行為である。しかし、欧州の指導者は、英グラスゴーで来月開催される国際的な気候変動に関する会合に参加し、自分たちのエネルギー分野でのマゾヒズムを高めようとしている。そして、米国のバイデン大統領はエネルギー安全保障を放棄し、彼らに加わることを熱望している。プーチン氏は自らの戦略的な運の強さに驚くに違いない。」

「民主主義に基づく自己破壊行為」というのはすごい表現だ。
世界のCO2排出量でたった3%の日本も、なぜこれほどの犠牲を払ってやらないといけないのかと思う。

日本はにはWSJのようなメディアはないのか…。