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2022.02.04 Friday
キャンセルカルチャー
先日の日経に、ハリー・ポッターの作者であるJ.K.ローリングが反トランスジェンダーの発言で、批判をあびていると書かれていた。
こういう動きを「キャンセルカルチャー」ということも初耳。 「キャンセルカルチャー」の定義は下記。 「不適切な言動を行なった個人や企業などに対し、SNSなどを通じて責任を追及し、「抹殺(キャンセル)」しようと呼びかける行為。 これまで暗黙の了解として解決されずにきた問題に焦点を当て、当事者に責任を負わせたり、社会の風潮に変化をもたらすことができる方法の1つである一方で、問題提起や解決の域を超え、そもそもの論点からはズレが生じてしまったり、集団の力での団体や個人に対して誹謗中傷を行なう事態にまで発展するケースが増え、昨今、問題視されている。」 このキャンセルというのは、「抹殺」という意味だとは知らなかった。 不適切な発言だと噛みつき、その人を社会的に抹殺するということが問題になっている。 調べてみると、元総理の森喜朗が「女性蔑視発言」問題の追求でオリパラの組織委員長を辞任させられたのも、キャンセルカルチャーだった。 海外の一例がJ.K.ローリングの発言をめぐる騒動だ。 彼女は以前「月経がある人は女性」という発言をして、反トランスジェンダーだと批判され、大炎上した。 問題の発言は「「新型コロナウイルス後の世界を、月経がある人にとってより平等なものに」という記事をシェア、こうコメントした。「”月経がある人”。昔はこの人たちを指す言葉があったはず。誰か教えて。ウンベン? ウィンパンド? ウーマッド?」。」 つまり、「月経がある人」を「ウィメン」と書かないことを皮肉ったのだ。 これが大炎上して、「生理がある=女性」とは思っていない人たちが怒った。 ローリングは反論して、「もし性別がないのであれば同性に惹かれることもなくなるし、今世界中にいる女性たちの現実が失われてしまう。私にはトランスジェンダーの知り合いもいるし愛しているけれど、性という概念を消してしまったら人生について意義のある話し合いをする力も失われてしまう。真実を話すのはヘイトスピーチではない」とツイートして、さらに批判は大きくなった。 ジョナサン・ヴァン・ネスというアメリカのノンバイナリー(男性にも女性にも分類されないジェンダー)だとカミングアウトした人も抗議した。 「トランスの女性も女性。トランスの黒人もトランスの非黒人も日々差別を経験し、命を落としている。私たちは今黒人とトランスの人のために闘っている。それなのにあなたはこういうことを言うわけ?」 ネット上の写真では髭をはやして化粧もせず、スカートを履いている姿があった。 ノンバイナリーというのは、こういうことなのか、とアメリカの自由さに驚いたのは事実。 一方で、ローリングを擁護する声もある。 ハリー・ポッターのシリーズでヴォルデモードを演じた男性がのツイート。 「彼女に向けられる辛らつな批判は私には理解できない」 「議論が白熱するのは理解できるが、誰かを非難したり、糾弾しなくては気が済まないという今の時代は非合理的だと感じる。自分たちとは異なる視点を持つ人に対して、人々が放つ憎悪の度合いや、浴びせる言葉の暴力には心をかき乱される」 インタビューでは、「そういった意見が鎮圧されるような世界は私は嫌いだ」と、言論の自由についても言及。 ローリングの意見に完全に同意するわけではないが、反論の度合いが強すぎるのは理解しかねるという感じ。 トランスジェンダーやノンバイナリーに寛容でないひとたちは、トランスフォビアと呼ばれる。 この言葉も初耳。 Wikipediaによると、この「フォビア」というのは「嫌悪」という意味。 つまり、トランスジェンダーを嫌悪している人になる。 しかし、トランスジェンダーの人たちが、それを憎む人たちから、暴行や殺人に遭っているという事実もある。 こちらを立てれば、あちらが立たず、ということで難しい。 暴行や殺人が起こっていない(と思われる)日本では、そこまでの動きはないが、何度か書いたようにLGBTQの運動に違和感を持つのはぼくだけではないだろう(と思う)。 以前アメリカの会社に出張した時、男性から女性になった人を”it”と呼んでいた話を書いたが、2000年当時はそんなだったのだ。 その時は、女性になった男性を「憎んでいる」という感じもあったなあ。 実際、そういう「女性」と同じロッカーで着替えるのは嫌だ、という女性もいると聞いた。 日本では、今の民法はトランスジェンダーは認めない前提でできていると思う。 でも、社会が変わっていって、人の意識も変わる。 ぼくはだんだんと年をとって、古い人間になってしまったから、今の考えにはついていけないのは事実。 だから、違和感がある。 でも、新しい考えを否定しようとは思わない。 ただ、違和感がある。 きっとローリング氏もそうだったのだろう。 どうもキャンセルカルチャーを言う人達は多様性を認めず、自分が正しいと決めつけるように思ってしまう。 |
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