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2020.11.11 Wednesday
真空管
ぼくがまだ小学生の頃、白黒テレビの時代はテレビの中がうっすら光っていた。
ぼんやり黄色がかった真空管の光だ。 放熱用に開けたスリットから、中の光を見ることができた。 ラジオはもうトランジスタになっていたが、テレビやステレオなどの大きな家電は、まだ真空管だった。 今の家電で真空管を使っているものはほとんどない。 嗜好品のオーディオアンプ類くらいだろう。 全てトランジスタになってしまった。 真空管の一種であるブラウン管も液晶ディスプレイに取って代わられた。 ブラウン管テレビが凋落すると同時に、日本の家電も凋落したように思う。 あのぼんやり光る真空管は、小さい頃のぼくらに電気の存在を教えてくれたものだ。 なぜテレビが遠くのものを写すことができるのか。 一度はテレビの裏側をのぞいてみたことがある子どもは多かったはず。 そこで見つかるのは、あのぼんやり光る真空管。 小学校の高学年の頃、捨ててある電気製品の中から真空管を取り出して、壁にぶつけて遊んだ覚えがある。 ボン、という音がして割れるのだが、その音が珍しくて面白かった。 真空管というくらいだから、中は真空になっていて、それが割れる時の破裂音が特徴的なのだ。 迷惑な小学生だったと思う。 でも、あのぼんやりした光が神秘的で、見ることができない電気というものを教えてくれた。 だからどう、という訳ではないが、何となく科学の入り口だったような気がする。 今の機械類にはそういう神秘さを与えるものがあるだろうか。 ぼくらはもう大人になってしまったから、今の子供がどう感じるのかはわからない。 願わくは、そういう「真空管」みたいなものが、今もあることを望む。 |
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