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2010.05.15 Saturday
いい話
今朝のゲゲゲの女房。
水木しげるはマンガを描く以前、紙芝居を描いていた。 その紙芝居屋の親方を演じているのは、上条恒彦。 昭和30年代の中ごろ。ぼくがまだ幼稚園から小学校の低学年。 当時はまだ貸本屋があったが、もう廃れかかっていた。 ぼくは見たことがないが、紙芝居屋はまだいたかもしれない。 ちょうど紙芝居屋が廃れ、まだ貸本屋が流行っていた頃が今日のゲゲゲの女房の設定。 上条恒彦というと、木枯し紋次郎のテーマを歌っていた。 バリトンのすごい声量だった。 しばらくしてテレビドラマに出はじめ、その後ミュージカルをやっていたりした。 久しぶりにテレビで見たが、もう髭が真っ白になっている。 その上条が紙芝居ではもう食えなくなって、金を借りに水木のところにやってくる。 数日滞在して、昔話に花が咲き、主人公の女房は昔紙芝居をやっていたことを知る。 お世話になった恩人なのだ。 今日は親方は質屋に紙芝居の道具を入れに行って、金をもらおうとするが、結局は質に入れられず、帰るに帰れない。 水木は出版社が倒産し、原稿料が入らず、お金がない。 それでも、女房にいくらか包んで渡してほしいという。 木の葉がお札に変わればいいのに、という女房。 もう紙芝居では食えないのだ。 お寺の境内で悄然としている親方を見つけ、一緒に家に帰り、水木が言う。 「少ないですが、持っていってください。汽車賃くらいしかはいっとらんのです…。」 親方はお金が3千円入った封筒をおしいただいて、頭を下げる。 水木も頭を下げる。 階段の下で様子をうかがう女房。 その夜、親方は九州に旅立っていった。 流行るものがあれば、滅ぶものがある。 滅ぶものへの郷愁。 古き良き時代。 そんな話だった。 |
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