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2017.03.10 Friday
労働組合と民主主義
昔、聞いた話を思い出した。
ぼくが組合員だった頃の話だ。 日本の特徴は企業内組合であり、組合員はみんな同じ会社の人だ。 ぼくのいた組合は、会社の中をいくつかの区に分けていて、KMさんはぼくと違う区だった。 当時、KMさんは組合の区の意見を取りまとめする役で、方針を組合員に伝え、それで了承を取って総会に持っていく、という役割だった。 職場で方針を伝えた時、一人意見がある人がいて、自分はこのことには反対だ、その理由は〜、ということを聞いた。 もちろん、多数決では賛成なので、その反対意見を必ずトップの総会で伝えるという事を約束して、その場は終わったらしい。 後日、総会が開かれ、その方針を順に採決していく。 その時に、その反対意見を聞いた案件になって、議長がでは、拍手を持って採決に変えたい、と言ったときに手を挙げ、「一人反対の意見があった」とみんなの前で言った。 ザワザワと反応が広がり、雰囲気が変わったらしい。 執行部はずっと満場一致で認められてきているので、一人の反対意見ということをどう扱えばいいのかわからなかったらしい。 それで、KMさんを別室に呼んで、その意見はなかったことにしてほしい、という話をされたとのこと。 しかし、KMさんは労働組合は民主的な組織であり、多数決は民主的な手続きであるから、それに対して一人が反対意見を出して、それを伝えてほしいと言われたことは、何らその手続きを破るものでもなく、それ自体は何の問題もないのではないか、と言ったとのこと。 逆に、自分はその意見を出した人に約束したのだから、それは引っ込められないと主張した。 それでも、執行部は今までの前例に「満場一致」以外の記録がないから、何とかそれは引っ込めてほしい、という押し問答になったらしい。 長ーい討議の末に、KMさんが持ち帰って、執行部がそう言っているから、伝えたことは間違いないので、満場一致で決めさせてほしいと伝えることになったはず。 「なんで引っ込めないかんのか、わからん」と言っていたことを思い出す。 結局は職場に帰り、その人に謝ったと言っていた。 ぼくは当時まだ20代だったが、この話はよく覚えている。 その後、組合の行状を見ていて、ああ、そういうもんなんやな、と良くも悪くも思った。 一言でいうと、形骸化しているということだろう。 思考停止と言ってもいい。 一人の反対意見があったことが、扱えないのだ。 そういう組織は日本には多いと思う。 ある意味、日本には民主主義が根付いていないということを表している。 今も同じかどうかはわからないが…。 |
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