考えたこと2

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臨床心理士の栄枯盛衰 4
2018年9月9日に第1回目の公認心理師試験があった。
心理関係者念願の国家資格。
ようやく心理関係の国家資格が創設された。
今はなき河合隼雄もそれを望んでいたのだろう。
でも、この状況を聞いたら、がっかりしただろうと思う。
臨床心理士関係者は、臨床心理士が国家資格になることを望んでいたが、うまくいかず、新たな資格が創設されたのが実情だからだ。

公認心理師は主に医療分野で心理検査をするための資格だと思っている。
それは、河合塾KALSのページの「公認心理師と臨床心理士の違い」を見たらわかる。

それによると、両者の違いは、「臨床心理士は医師との「連携」で業務をしますが、公認心理師は医師の「指導」が必要になります」というもの。
結局は「医療現場では医師の指示を受ける」というところが、医療関係団体が譲れないところだった。
そして、臨床心理士(上層部)は医師の指示を受けることは「認めれらない」ところだった。
当初は資格は1本化されると聞いていたが、そうはならなかった原因が、この「指示」か「連携」かというところだったということだ。

ぼくが勤めていた大学の臨床関係の人たちは、臨床心理士は医師と対等、というスタンスだった。
それは、海外でもそうなっているらしい(真偽は不明)。
どちらも、大学に6年行って取る資格だから、それが当然、という感じだった。

ただ、海外で臨床心理士というのは、もっと長い実習期間が必要で、そんなに簡単には取れないという。
河合隼雄は、そういう資格を目指して創設に尽力したが、残念ながら偏差値的にいうと大きな差がついているのが事実。
手っ取り早く数を増やそうという方針で行ったのだろうし、これほど心理バブルが起こるとは思っていなかったのかもしれない。

結局は大学がバカみたいにたくさん臨床心理士になれる、という学部・学科を作った報いだったと思う。
受験生を呼ぶために、どちらかというと新しい大学がそれらを新設して、20年ちょっとの間に、150以上の「第一種指定大学院」ができているのだから、当然だ。
今や心理系では他の勢力をおさえて、最大勢力になっている。
ただ、心理学系の学会で最大派閥になって、臨床系の人たちは浮かれていたのだろう。
結局医療現場のことを理解せず、別の資格を作ってしまった。

ぼくは、医療現場の現実を考えると、責任者というのは必ず必要だし、その責任者の指示に従うのは当然のことだと思う。
生命に関わる場合もあるわけで、責任の所在をはっきりさせるのは当然のことだ。
そして、それが「医師の指示」ということになったのだろう。
それは実際に仕事をしている人たちなら、当たり前のことだし、そうでなければ逆に仕事ができない。
「連携」では責任の所在がわからなくなる。

指示系統をはっきりさせることは、実務に関わる人ならわかっていることだろう。
そして、それが必ずしも資格の価値と結びつかないこともわかっているはずだ。
指示に従うから格下の資格だ、などというのは、実務を知らない人たちの言うこと。
お互いにプロとして意見を言い、それをお互いに尊重するから、チームが成り立つのだ。
臨床心理士の代表たちは、それが指示系統とは別の問題だとわからなかったのだろう。

この「勘違い」が結局は臨床心理士の資格を貶めたのだと思う。

というのは、これら2つの資格は「医師の指示」以外に全く違いがないからだ。
分野も同じで、どちらかというと公認心理師の方が基礎心理を重視しているだけ、範囲は広いかもしれない。
これら2つの資格はどうなっていくのだろう。

順当に考えれば、医療領域は公認心理師になる。
その他の領域はどちらでもいいのだが、公認心理師の方は大学院に行かなくても実務経験を積めば受験できる。
受験生向けのページには、「税金からお給料をもらう仕事は国家資格の公認心理師になる可能性がある」というような事も書いてある。

心理バブルでできた大学も、当面は様子見だろう。
臨床心理士になるためのカリキュラムを持っていれば、ちょっとカリキュラムを変えれば公認心理師に対応することができる。
ぼくのいた大学も、公認心理師の対応をしている。
中には早々と臨床心理士をやめて、公認心理師に鞍替えしたところもあるが…。

やっぱり国家資格が強いんだろうと思う。
まだ活動領域が違うなら、棲み分けもあるが、全く同じなのだ。

きっと河合先生は草葉の陰で「あーあ、やってしもた」と言っているのだと思う。
せっかく、苦労して作った資格だったが、先細りだろうなあ。

これが栄枯盛衰の「衰」にあたる。
残念だが、仕方がない。

これがぼくが見てきた臨床心理士という資格。

4回シリーズはおしまい。




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