考えたこと2

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臨床心理士の栄枯盛衰 1
ぼくは大学で勤め、臨床心理士という資格を事務の立場で10年間見てきた。
指定を受けた大学院に行って、受験資格が与えられる。
文科省の認定資格。

この資格について、ぼくが10年間見てきたことを書こうと思う。

臨床心理士という資格は、元文化庁長官の河合隼雄が作った資格(こういうと語弊があるかもしれないが)。
もちろん一人で作ったわけではないが、この人がスイスのユング研究所でカウンセリングの訓練を受けて日本に帰ってきて、京都大学の教育学部でカウンセリングを教え、日本臨床心理学会などの会長などを歴任し、臨床心理士の資格整備に尽くした。
彼がいなければ、日本で、臨床心理士という資格はできなかったと思う。

Wikipediaにも、河合隼雄の欄には「日本心理臨床学会を設立し、同理事長に就任。臨床心理士制度や、スクールカウンセラー制度の確立に尽力し、日本臨床心理士会会長も務めた」と書いてある。

1995年にいじめが社会的な問題になり、臨床心理の専門家として、スクールカウンセラーという文科省の事業が開始され、2001年からは国の補助事業となり、そのあたりから臨床心理士は脚光を浴びた。
資格認定した文科省も、資格と仕事を結び付けないといけなかったのだろう。
当時から、日本ではなかなか「心の相談」というのにお金を払うというのは根付かないと言われていた。
だから、せっかく臨床心理士を作ったのだから、「食える資格」にしよう、ということだった。

臨床心理士制度は1996年に現在の養成課程となって、今や35000名以上が資格取得者数。
養成課程というのは、臨床心理士養成大学院指定制度が作られ、大学院卒業の要件が資格に結びついたということだ。
当時、文科省は大学院重点化をやっており、ちょうどよかったのだろう。
ちなみに、昨今の資格と同じく、資格を取っても、更新のために講習を受ける必要がある。
まだ、臨床心理士の講習は安いから良心的だが、キャリアカウンセラーの講習は高い!
これは、ぼくのボヤキ。

ぼくが大学に就職したのは2004年だったから、指定大学院ができて8年目というところだ。

その大学は、1996年開学で、日本初の臨床心理学科があった。
河合隼雄が関係しており、時代を先取りして「心の専門家」を作ろうということで作られたと聞いている。
そのおかげで、開学当初はすごい人気だったらしい。(偏差値は65だったと聞いた)
今は大教室で入試をやっているが、当時はそれでは足りず、体育館に椅子と机を運んでやったというほどだ。
開学当時からいる事務の人たちは、「そんなこともあった」という体で、遠くを見るような目で話していた。
ということは、2004年にはもうその勢いはなかったということだ。

開学当時は全国区で、下宿生も多かったと聞いている。
もちろん、ぼくが行った2004年には下宿してまで来る人はだいぶ減っていたが、それでも今よりは多かった。
それくらい、ブームだったということだ。

人の心というのは、誰でもが、何かを言える。
ボイラーやコンピューターのように、特定の知識がなければ全くわからないというものではない。
それが、心理カウンセラーという資格を増やしたのだろう。

なんたら(心理)カウンセラーという資格は、民間に20以上ある。
たいがいは、講習を受けて、ナントカ協会がやっている試験を受けて、資格を得るというもの。
その中で、臨床心理士は大学院を出て、実習もしないといけないというハードルがあり、文科省が認定した資格ということで、脚光をあびた。

1996年に10校程度だった第1種指定大学院は、2004年に100を超えた。
まさに心理バブルだった。

学校法人にとっては、大学院資格(これは、6年分学費を取れるということ)でもあり、文科省の認定資格ということも相まって、志願者を集められるおいしい資格になった。

昨今は大学選びの時に、「なんの資格が取れるか」というのは大きなファクターになる。
ウソだと思ったら、どこかの大学のパンフレットを見てみればいい。
「卒業後の進路、資格」というような欄に、いろんな資格が書いてある。
いくら大学といっても、親や志願者は実利を気にするのだ。
そこに、心理学関係の学部・学科なら「臨床心理士」というのが加わったということ。

当時はいじめや学級崩壊などの問題もあって、引く手あまただと思われたのもある。
また、大手の学校がやっていない資格ということで、弱小私学でどんどんやるところが増えた。
まさに、心理ブームという感じ。

2015年現在ではなんと163校が第1種指定大学院になっているという。

日本臨床心理士資格認定協会が資格の認定機関。

ホームページによると、「昭和63(1988)年に、16の臨床心理学に関連する心理学関係学会の協賛を得て発足することになった日本臨床心理士資格認定協会は、その2年後に文部科学省が認可する財団法人となり、平成25(2013)年4月1日付で内閣府認可の公益財団法人に移行し、今日の発展をみています。」とある。
臨床関係の学会のフルサポートでやっているということだ。

そんな形で、発足した資格だったが、ぼくがキャリアの仕事をし始めた2007年には陰りがでてきたのが事実。

その経緯はまた次回。



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