考えたこと2

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薬学部
日刊ゲンダイの記事に「1200万円超がパー 薬学部生の4割が薬剤師になれない」 というのがあった。

薬学部を取り巻く環境について知らないと、この記事の意味はわからない。
実は薬学部は2003年以降文科省が規制を緩和して、新設が相次いだ。
薬剤師を増やすという名目だったが、これが大失敗。
新設大学の薬学部は、概して偏差値が低い。
大学としてはせっかく教員を集め、設備投資して薬学部を作ったのだから受験生を集めたい。
結局は経営優先で、どう頑張っても薬剤師の国家試験に通らないレベルの学生を通してしまう。
いくら薬学部が人気があるといっても、急に偏差値が上がるワケがないのだ。
その結果が年に200万円の学費を6年間出して(もちろん途中で退学する人もいるだろうが)、薬剤師になれない人が、国家試験受験生の4割、という数字になった。

実は、国家試験まで到達できなかった学生もたくさんいる。
このページによると、最下位の日本薬科大学では6年前に311人の学生が薬学部に入学したが、6年後に国家試験を受けた学生が75人しかいない。
その結果、通った学生が73人で合格率97.3%となったが、実際には238人が留年している。
要はこの大学に入っても、6年で薬剤師になれるのは23.5%しかいないということだ。
そんな大学が下の方に並んでいる。

学部としては薬剤師を養成するということで設置しているが、入試はお金優先で人数を優先して取り、その大学の教育で目的を全うできなくても(薬剤師になれなくても)仕方ない、という姿勢だ。
入試の目的の一つである、「その大学の教育システムで教育できない学生を落とす」という機能は、大学経営のために無視される。
このところぼくがずっと言っている事だ。

その結果が、国家試験に現れている。

薬学部の場合、結果がはっきりするので、目に見えるが、下位校では他の一般的な学部でも、薬学部と同じことが、起こっている。
どう考えても、大卒として就職できない学生を取っているのだ。

大卒としての就職、というのは大学生を対象にした就職ということだ。
大卒として就職できない、という意味は、大卒に向けた求人ではなく、ハローワーク等の「学歴不問」という求人とか、「年齢不問、経験不問」というような求人で就職していく、ということだ。
採用する側は高卒でも、中途でもかまわない、ということになる。

何度も言うが、入試の役割は「その大学で教育し、大卒レベルと世間が認める人を卒業させる」ための人材を選別することだ。
何でもいいから卒業させるのではない。

それが機能していない学校がたくさんある、ということだ。
もちろん、どこの学校にもいい学生はいる。
しかし、下位校にいけばいくほど「本来なら高校を出て就職したほうがよかった学生」が増えてくる。
そういう学生を高校側も送りこんでくる。
なぜかというと、全入になって、就職よりも進学の方が簡単になったからだ。
もちろん、入試が機能していればいくら数字的には全入でも、誰でも入れるという事にはならないが、下位校では入試が機能していないところが多いから、進学の方が簡単になるのだ。
「ウチはお金がないから…」という親の相談は、「大丈夫、奨学金をみなさん借りてますから」という高校の教師の言葉で封じられる。
実際にそういう教師がいるらしい。詳しくはこの記事を。

これは一人大学(下位校)が悪いわけではない。
日本の教育システム全体が悪いのだと思う。
高校卒業レベルが下がっている。
全てを偏差値で見るから、絶対値での比較ができなくなる。
いくら偏差値で測っていても、社会にでるときには絶対値だ。
同じ偏差値50でも10年前、20年前と今では違うのだろう。
そのことをわかっていても、誰も何も言わない。
なぜなんだろうか。

ある社長と就職の話をした時、大学生の就職の面接で「ウチは15000円に消費税をつけたらいくらなるか?という質問をするが、それに正解するのは半分だ」と言っていた。
「今の大学生はどないなっとんねん」と言われて、「すいません。それが実力です。」と答えざるを得ないのが、下位校のつらいところだ。

パーセントの計算を学生が覚えるべきなのは小学校高学年。
それができないまま、中学校も高等学校も卒業できる。そして大学に入り、大学は卒業させる。
専門の学士号と割合の計算は関係ないからだ。
マジメに専門外の「小学校の計算」を教えている大学は、こんなカリキュラムをやっていていいのか、などと批判される。
それでも、やっているだけマジメだろう。
入試でなぜそういう学生を入れるのか、という疑問は残るが、それは多くの下位校も同じだ。

この状態はどう考えてもオカシイ。

下位の大学はもっと大きな声で「初等、中等教育を何とかしろ」と言うべきだと思う。
そうでないと、高等教育はできない。

90年代に国立大学でも、分数ができない学生がいたのに、何もしていないから、仕方ないか…。



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