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2014.02.17 Monday
あの頃のまま
ブレッド・アンド・バターの曲に、「あの頃のまま」というのがある。
ユーミンが作った曲だ。 学生みたいな生活を続けている、モラトリアムの「ぼく」と就職して社会に出た「君」を描いた曲。 歌詞を散文にすると、こんな感じ。 夕方の駅で見かけた君は、スーツ姿が板についていた。 ぼくはまだ気ままな暮らし。 学生時代のままだ。 「羨ましいやつだ」と君は笑った。 ネクタイを緩めて、寂しげな君は、馴染みに店で腰をすえて飲む。 そのころ、ぼくは日焼けした両足を投げ出して、サイモンとガーファンクルを久しぶりに聞く。 人生の節目を越えられず、卒業したくないぼく。 他愛ない夢なんか切り捨てた君。 人は幸せのカタチにこだわらずに生きていくものだ。 瞳をそらさないで、自分の道を生きていくのだ。 この曲は30代のころ、好きだった。 ユーミン世代の、ノンポリだが少し反体制で、社会に取り込まれるのはいやだ、という若者の思いを表している。 「いちご白書をもう一度」では男女だったが、こちらは男同士だ。 でも、年をとって、こないだ見方が変わったことに気づいた。 もうすぐ57歳。 若い頃は圧倒的に「ぼく」に感情移入していたが、この年になると「君」の気持ちがわかる。 このうたは「ぼく」の立場で書かれているが、「君」の立場で書くと、きっとこんなふうになる。 夕方の駅で見かけたあいつは、気ままな学生時代のようだ。 ぼくは会社勤め。 「羨ましいやつだ」と笑ってみたが、彼はどうやって生きていくつもりだろうか。 「羨ましい」とは思うが、何かそうでない部分もある。 ネクタイを緩め、馴染みの店で飲む。 学生時代のこと、会社のこと、社会のことを考える。 矛盾はいろいろあるが、それを飲み込んで生きていかないと仕方ない。それが人生だ。 あいつは今頃学生時代に流行ったサイモンとガーファンクルでも聞いているのだろうか。 夢は夢で置いておこう。そうするしかない。 それが人生なんだ。 あいつはあいつ。ぼくは自分の道を歩いていくしかない…。 そんな風な思いで「あの頃のまま」を聞くようになった。 年をとったら年をとったなりの見方や考え方が出てくる。 それは悪いことではない。 人はモラトリアムにケリをつけて、社会の中で生きていくしかないと思う。 それが人生だと今ならわかる。 だから、C’est la vie (これが人生さ)という言葉がある。 やっぱりフランス人はオトナかもしれない。 |
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