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「大学中退」問題
1/31の毎日ニュースによると、文部科学省が「大学中退」問題の実態を把握することになったとのこと。

この問題は、いろんな意味で根が深い。

記事で紹介されている静岡産業大学の取り組み事例は「10年近く前から学生約10人につき1人の教員が「アドバイザー」として付き、授業への出席率が悪ければ面談して対応策を考える。保護者の協力も不可欠とし、年2回、保護者対象の相談会も開く。」とのこと。

これが大学か?と思う人も多いだろう。
実際、10人に1人のアドバイザーという担任が、学生の面倒を見るということだ。
年に2回、保護者にも協力をあおぐ。
しかし、そうまでして大学に学生を残らせないといけないのだろうか。
そこに現在の大学教育のジレンマがある。

記事はこう続ける。「中退には「授業についていけない」という学力不足が要因のケースも多いため、入学前教育や1年生の時にリメディアル教育(中学・高校レベルの学び直し)を実施する大学も増加。日本リメディアル教育学会の11年調査では全大学の7割超が実施している。背景には、大学を選ばなければ入れる「全入時代」になったことがあるとも指摘されている。目的が不明確だったり不本意入学したりするなど学生の意識の問題も大きい。」

大学で、中学・高校レベルの学び直しをやっている。
そういえば、日本橋大学では「アルファベットの読み方」や「整数の計算」などを教える授業があり、「バカ田大学」などと悪口を言われていた。
この件についてはネット上ではいろいろな記事が出ており、一概に日本橋大学のことを「バカだ」
とは言っていないのが現実。むしろ評価する声も大きかったと思う。

それにしても、全大学の7割が何らかの中学・高校の学び直しの内容をやっている、ということだ。
これは驚くべき事実。
それらの学び直しが必要な学生が、大学の授業についていけないということは容易に想像できる。

さらに記事は続く。「独自に中退者の実態調査や大学の中退対策支援をしているNPO法人「NEWVERY」(東京都)の山本繁理事長は「経済的な理由よりもミスマッチが主因。対策は急務だ」と指摘する。中退の理由は▽教育内容・方法が合わない▽学力不足で授業についていけない、などが目立ち、中退者の7割近くは大学1年の段階で何らかのつまずきがあるという。山本理事長は「高校の進路指導で、自分に合った大学が見つけられる機会を生徒に提供するとともに大学側も教育内容・方法を在籍する学生に合わせる必要がある」と指摘している。」

忘れないでほしいのは、それらの学生も入試を経て入ってきたということだ。
本来、入試の役割というのは何なのか?
入試は本来「その大学の学びについてこれる学生を選抜する」という意図を持っている。
相対的にはより優秀な学生を選抜する、ということだが、絶対的にはある線を切ったら、その大学の教育システムでは教育できないということであり、それを選抜する機能も持っているのだ。

ところが、その「絶対的な線」は多くの大学で機能していない。
そういう考えすら持っていないというのが実情だと思う。
例えば、たいがいの大学の英語の授業では、高校までの英語はある程度わかっていると仮定してカリキュラムを立てている。
少なくとも、中学のレベルはクリアしているという前提だろう。
ところが、その前提がクリアされていないから、リメディアルが必要になる。
そうなると、一部の学生は英語の単位が取れない。
おおかたの学校では、語学は必修になっているから、その学生は卒業できない。
となると、卒業できないとわかっている学生は、入学させてはいけない、ということになるだろう。
簡単なリクツだ。
しかし、多くの大学では、そうなっていない。

それはなぜか?
そういう学生を入れなければ、定員割れを起こすからだ。
現実、私大の4割が定員割れを起こしている。
既に定員割れを起こしている学校は、志願者がいても、学生のレベルを見て不合格にしているのだろうか。
そんなことはないと思う。
志願者が足りないのだ。

だから、今の入試は落とすためにやっているのではなく、何とかして入ってもらおうとしてやっている、ということになる。
志願者が足りているのに、定員割れを起こしている大学があるとしたら、それは志の高い大学だと思う。
ほとんどの大学では、入学者の決定は教授会が権限を持っている。
だから、教授会の志が高ければ、中退する学生は減るのだろう。
実際には教授会の志は低い。
学生の数が減って、自分たちが食えなくなることを恐れている。
それが現実だ。

実際には、大学中退の問題は、それまでの教育に帰する部分が大きい。
小・中・高の問題だ。
それさえちゃんとやっていれば、中退は増えないはずだ。

しかし、文科省もこの問題にクビを突っ込んだら、自らのクビを締めることになる。
小・中の義務教育をもっとちゃんとやれ、ということだ。

残念ながら、文科省も志が高くない。

この国はどうなっていくのだろうか…。



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