考えたこと2

2024.9.24から、今までhttp:で始まっていたリンクが、https:に変わります。申し訳ありませんが、リンクが見られないときは、httpsに変えてみてください。
CALENDAR
<< December 2008 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 >>
+SELECTED ENTRIES
+RECENT COMMENTS
+CATEGORIES
+ARCHIVES
+PROFILE
+OTHERS
切手
二十数年前、フランスに3ヶ月ほどいたことがある。

仕事で長期出張だった。
ビジネスホテルに泊まって、毎日クルマで通う。

毎朝、フランスパンを食べる。
フランスのフランスパンは本当においしい。
日本人はぼく一人で、レストランに行っても言葉は通じない。
ジェスチャーとかたことのフランス語で注文する。
何日かたつと、毎日同じものしか頼まないので、座って目で合図するだけでよくなった。

フロントでキーをもらうのも同じ。
英語はほとんど通じない。
Room No.505。サンソンサンというと、キーを出してくれる。

ある日異変が起こった。
帰ってきて、キーをもらおうとしたら、何か言っている。
よくわからないが、家から手紙がついたらしい。

切手がほしい…と言っているようだ。

You want this stamp?というと、ウィという。
OK。その場でハサミで切って渡す。
受付の彼女は、ものすごくうれしそうな顔をした。

なるほど、日本の切手はきれいだ。

あんな切手は世界中探してもないだろう。

価値がわかったので、何でもいいから記念切手か何かをたくさん送ってほしいと返事を書いた。

数日後、手紙が来て、受付の彼女に新品をあげた。
今度は、飛び上がらんばかりに喜んでいた。
メルシー・ボクー。大変ありがとう…、そんな言葉は聞いたことがない。

次の日、朝食堂に行くと、奥からシェフが出てきた。
英語が話せるらしく、「切手を譲ってほしいというウェイトレスがいる」という。
フロントの女性に聞いたらしい。

いいよ、まだ余ってるから…、といって記念切手を1シートあげた。

彼女もとてもうれしそうな顔をして、メルシー・ボクーを連発した。

日本の切手は、彼の地ですごくめずらしく、そしてきれいなことがわかった。
もしコレクターがいれば、日本の切手はすごく喜ばれる。

あのホテルの受付の彼女と、ウェイトレスの彼女。
彼女らのスタンプ・ブックに、きっとぼくがあげた85年の記念切手が貼られている。

あれから20年ちょっと。
あけて、それを見るたびに、「これは日本人にもらったのよ」と言ってくれていると思う。

そんな事を考えると、うれしくなる。


| | 考えたこと | 18:50 | comments(0) | trackbacks(0) |