考えたこと2

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エヌサン
初めて乗った車は、ホンダのN360という軽自動車だった。
360というのは、当時の軽自動車の規格が360ccだったから。

今は660ccになっているが、あの頃は小さなエンジンだった。
シリンダーの容量が、牛乳瓶2本で、4気筒だったから、一つのシリンダーはコップ半分くらい。

夏はいいのだが、冬場はエンジンをかけるのが一苦労だった。
今は付いているクルマなどないが、チョークというノブがあって、それを引っぱるとガソリンがよけいに流れる。
チョークを引いて、アクセルを何度か踏んでおいて、キーを回す。
慣れると、うまくエンジンが回るのだが、エンジンがかからないからといって、アクセルを踏みすぎるとよけいにかからない。
ガソリンと空気の混合気を着火する、スパークプラグがガソリンで濡れてしまって、かからなくなるのだ。
そうなると、プラグが乾くまで待たなければならない。
ムリにエンジンをかけるために、キーを回してセルモーターを回しすぎると、バッテリーが上がる。
クルマに慣れないと、何かと困る…そんなクルマだった。

下宿が近い友達と3人で一人1万6千円ちょっとずつ出して、5万円でそのまた友達から買ったクルマだった。

N360だから、エヌサンという略称。
Nさんではない。エヌサンビャクロクジュウだから、エヌサンだ。

当然、マニュアルシフトだった。
これまた、慣れないとバックギアが入らなかった。

エアコンもないし、夏場に雨が降ると、ヒーターを入れなければならない。フロントウィンドウが曇るのだ。

窓は手で回して降ろす。
三角形の窓がついていて、その部分だけ開閉できる仕組みだった。
ラジオはAMだけ。よくナイターを聞いた。試合が佳境に入って、クルマの中で友達と聞き続けたこともあった。

きっと今のクルマとは比べものにならないくらい、うるさかったハズだ。
たぶん、バイクのエンジンから作ったのだろう…ビーン、ビーンというエンジン音だった。
回転数もバイクなみに高かったんだと思う。
思う…というのは、回転計はついていなかったからわからないのだ。スピードメーターの横には大きなアナログ時計がついていた。

そのクルマで、よく走った。
夏場、昼間は暑いので、夜中に走ったものだ。

どれくらい乗ったのだろうか…。
半年くらいだったかな。

ある日、エンジンがストンと止まって、それっきり動かなくなった。
整備工場に連絡して、引き取ってもらって、エンジンが壊れたということで、そのまま廃車になった。
エンジンオイルなど、おかまいなしに走り続けたツケがきたのだろう。かわいそうなことをした。
廃車料金が5000円だったと思う。

緑色のエヌサンだった。

短い間だったが、あのクルマにはお世話になった。

仲良くならなければ、ちゃんと動かせない。
今のクルマのように、だれでもすぐにエンジンがかけられて、走れる…というような代物ではなかった。

でも、何か人間味があったなあ。
丸いヘッドランプで、少し古いミニクーパーに似ているデザイン。
ちょっととぼけた顔のかわいらしいクルマだった。

たしか、1枚写真があったハズだ。
でも、白黒だったから、緑色かどうかはわからない。

どんどんクルマは電子化していっているが、エヌサンは機械のかたまりだった。
機嫌が良い日もあれば、悪い日もある…。

今のクルマは便利だが、「不便な楽しさ」を持ったクルマだった。

だから、ストンとエンジンが止まった時のことは忘れられないし、かわいそうなことをしたと今でも思っている。



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