考えたこと2

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えー
昨日に続いて落語のはなし。

尊敬する先輩が、素人の落語は最初の一声、「えー」で決まると言っていた。
落語の出だしはだいたい決まっていて、ぼくは「えー、しばらくのあいだ、お付き合いを願っておきますが…」という言葉に決めていた。

この、「えー…」の一声が伝えるものは大きい。

亡くなった枝雀は、落語というのは舞台の上から「こちらが笑わせましょう」、客席では「そちらが笑いましょう」という約束事の上で成り立っているものだと言っていた。
そのためには双方に信頼がなければならない。

その、信頼関係を築くのが、最初の一声「えー…」である。

落研時代、何度か素人の寄席を見に行ったことがあるが、たしかに、面白い演者は最初から面白いとわかる。
正確には、「面白そうだ」と思えるのだが、これにはあまりハズレがない。
やっぱり、最初の「えー」の一声で何かが伝わっているのだ。
これが、「笑わせましょう vs 笑いましょう」の約束事が成り立ったということなんだろう。

プロの場合は、出てきた時からある程度の演者の知識があり、「あ、あの人や」という了解があるので、最初の一声以前の信頼関係がある。(逆に、マイナスの信頼を得ている演者もいるが…)

でも、素人はそれがない。
だから、「えー」が大事なのだ。

「えー」という声の高さ、張り、声質、顔の表情やしぐさ、目線、表情…何が影響を及ぼしているのかはわからないが、その瞬間に何かが演者と聞き手の間で了解される。

自分に落語対する自信、余裕といったものは、すごく大事だ。
それは、たしかに「えー」に表れる。

練習不足などで、演者に不安があると、すぐにわかる。
聞き手がそれを心配してしまうと、もうダメだ。笑えない。

きっと最初から100%の力でやってはダメなんだと思う。
最初は80%以下の力で始めないと、余裕が感じられず、笑えなくなるような気がする。
もちろん噺に入ったら、100%の力を出せばよい。
でも、話しはじめは力んではダメだと思う。

適度に力を抜いて、余裕を持って、客席を見渡し、笑顔で「えー、しばらくのあいだ…」と始められれば、よいのだろう。

今だからわかる…。

あの頃は、そんなことはわからなかった。

だから、失敗も多かったなあ…。




| | 考えたこと | 23:15 | comments(0) | trackbacks(0) |
マクラ
朝のドラマを見ていると、懐かしい落語の演題が次から次へと出てくる。

愛宕山、算段の平兵衛、崇徳院、胴乱の幸助…。
難しい噺ばかりだが、どれもなじみのある噺。

落研時代、春と秋に大きな寄席をやるのだが、そこでやる噺は、かなり練習する。
前日、前々日には出演者一同集まって、順番にみんなの前で話すのだ。
最後の点検、という感じ。時にはOBも来て「ここはこうした方が…」というような注意ももらえる。

実際に落語を始めるまでの導入部をマクラというのだが、これは3年目くらいになると、自分のオリジナルを考えるのだ。
それは練習ではやらなかったりする。
本番で、部員にも笑ってほしい…ということになる。

素人の落語は最初が勝負。
マクラで笑わせたら、演者も落ちつくし、お客さんも安心する。
お客さんが安心するのは、すごく大事で、安心しないと余裕を持って聞けないし、余裕を持って聞けないと笑えないのだ。
だから、マクラには気をつかう。

なるべく、今からやる噺を関係のあるもので、今話題になっているような時事ネタや、その季節のネタ、直前の演者に絡めたものなどが好ましい。
最近のテレビ番組をサカナにするとか、自分ならではのものがよい…とはわかっていても、難しい。

あんまり成功した事はないなあ…。

一度だけ、満足のいくマクラができた。
あんまり練られたネタではなかったが、あとでテープを聞いて、ヘタな自分らしい、勢いで話したものだった。

そう、「勢い」も大事だ。
空回りしたらダメだが、ぼくの場合は、勢いがなければアウトという感じだった。

朝のドラマを見ていると、落語はいいなあ、と思う。

難しいですけどね。



| | 考えたこと | 01:41 | comments(2) | trackbacks(0) |