考えたこと2

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戸籍
父の実家が広島だったので、結婚までは戸籍は広島県だった。
世羅郡世羅西町というところで、当時広島市から汽車で数時間がかりで三次市に入り、そこからまだ奥に行ったところだったと思う。
祖母は戸籍の場所ではなく、三次市に住んでいたので、三次市の祖母の家には何度か行ったことがある。
戸籍の住所には一度だけ行った。
以前、父の祖父が住んでいて、その本家筋の人が住んでいたのを訪ねた。
両親と弟夫婦と5人でレンタカーを借りて行った。峠を越えて、途中道ががわからなくなってウロウロしたが、さすがに小さい頃の土地勘が戻って、父の指示で着くことができた。父も何十年ぶりかで行ったはずだが、大したものだと思った。
田畑と家しかなく、昼には有線放送で体操の音楽が流れ、役場のお知らせみたいな内容の話が聞こえて、びっくりした。
畑の野菜をもらって帰ったが、大根がすごくおいしかったことを覚えている。
取れたての野菜はおいしかった。
あれはまだ父が元気だったころだから、十数年前になるだろうか…。

そんなわけで、広島はぼくにとって近い場所だ。

以前、仕事で三次(みよし)に行くことが何度かあったが、不思議な縁を感じたものだ。

祖父は戦死し、祖母は終戦前に三次に帰ってきていて、原爆が落ちた後の広島に入ったと言っていた。
原爆の話は何度か祖母から聞いた。
広島市には仕事で何度も行ったことがあるが、原爆記念館には行っていない。
祖母の話を聞いて、何となく足が遠のいたまま、今まできた。

接待で広島の料亭で食べた牡蠣にあたったこともある。
あの時は、一週間大変だった。牡蠣は、食べてから24時間経ってから症状が出るということもその時知った。
あとで、広島の人は、あたったと思ったら、すぐに牛乳をたくさん飲んで吐くという対処療法をすると聞いた。
胃の洗浄になるのだ…ということだったが、実際に早く治るとのこと。

もう仕事の関係で広島に行くこともなくなったのは残念だ。

最近はあまり見ないが、高校野球も、兵庫県代表と並んで広島県代表を応援してしまう。
タイガースもいいが、広島カープもいい。

母は根っからの神戸っ子で、父と結婚して戸籍が広島になり、戸籍の書類が必要になるたびに町役場に電話して封書で切手を送り、届くのを待つ、という不便をしたので、ぼくには戸籍を神戸にすることを勧めたのだと思う。
もちろん、ぼくも神戸で生まれて育ったので、戸籍を神戸にすることにはなんの異存もなかった。

でも、それまで、何かの書類に戸籍の欄があるたびに、広島県世羅郡世羅西町…と書いていたことが、ぼくと広島を近づけた一つの原因だったような気がする。
もちろん、広島に祖母がいて、毎年冬になると神戸に来て正月を過ごしていたという事もあったのだが…。

盆や正月になると、帰省の話題が職場などで出る。
「いなかに帰るんですわ…」というような、はずんだ声の会話があったりする。
その時に、ぼくは神戸が実家やから…という話をするのだが、その時に、父の実家は広島やけど…とつけ加えて話したものだった。
どこか、こころの隅っこで、広島に自分のいなかがある、という思いがあったのかもしれない。
祖母と父が亡くなって、そんな思いが薄れてきたのかもしれない。

それでも、「広島県世羅郡世羅西町」という住所は一生頭の中にあるだろう。

そう思うと、たかが戸籍だが、されど戸籍だと思う。
母が亡くなり、ぼくが亡くなり、弟が亡くなれば、ぼくの家系と広島は縁が切れてしまう。
若いころは戸籍などどうでもいいと思っていたが、この歳になるとそんなことを考える。

いつか、もう一度、そこに行きたいと思う。



| | 考えたこと | 22:00 | comments(0) | trackbacks(0) |
恋のからたち垣の巻
恋のからたち垣の巻 田辺聖子 集英社文庫

題名には異本源氏物語という副題がついている。
田辺聖子の源氏物語を土台にした小説。

笑える、という意味での「おもしろい」本。

主人公は伴男(ともお)という、光源氏の家来。
舞台は京都で、大将(光源氏)のセリフがやたらおもしろい。
本物の源氏物語では、一部の隙もない二枚目であるが、この物語ではワガママで少し天然ボケが入ったオジサンになっている。

紫式部も出てきて、これは、人気作家の役…そのままである。

高校の古典の教科書で、源氏物語も枕草子も習ったが、どちらもそれから10年以上たって、田辺聖子で読んだ。
源氏物語は他の人も現代語訳しているが、読み比べてみたらおもしろいだろう…とは思うものの、なかなか実行にうつせない。
田辺聖子訳がすごくおもしろかったからだ。(これは興味深いという方のおもしろい)

この本は、平安時代の京都を舞台に、光源氏のお供の伴男が主人のワガママに振り回されて困る…というもので、源氏物語に出てきた女性たちは出てこない。
このシリーズ、もう2冊あるようで(あとがきを見るまで知らなかった)、そちらの方は源氏物語のパロディの部分もあるようだ。

いつもの事ながら、楽しんで読める。

浮き世の憂さを忘れて、本の世界に入りたいというような時には、田辺聖子にかぎる。

言葉がスッと頭に入ってくるのは、文章が上手だからだと思う。

短編7つ、あっという間に時間は過ぎます。


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