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2023.10.22 Sunday
憎めないエゴイスト
Iくんは大学に入って近所に下宿したときに仲良くなった。
同じ学科で、二人とも勉強熱心ではなかった。 彼は学園祭の実行委員会で活動していた。 まだヘルメットをかぶった学生がウロウロしていた頃だ。 憎めないエゴイストだった。 マージャンしよう、と言い出して4人集まって始めたら、「眠いから寝るわ」と言って勝ち逃げで自室に帰って、終わって精算する時には起きてきたり、当時できたてのディスコに凝って、ブーツを履いて「踊ろうジャン」と言っていたのを思い出す。 けっこう自己中心的なヤツだったが、何となく憎めないのだ。 卒業して、自分は理系の柄ではないと商社に入ったが、そこの子会社の情報システムを担当した。 営業がやりたかったようだが、結局情シスになった。 就職してから、2回ほど会う機会があったが、もう十数年前。 昨日は久しぶりに会って、同級生とともに旧交を温めた。 彼の会社は十数年前に名古屋の会社に吸収された。 会社を閉める責任者になったようだ。 彼の会社は個人プレーの社風で、それは吸収した会社とは反対だったという。 高度成長の時代は終わり、低成長の時代になって、もう個人プレーでできる時代ではなかったと彼は言う。 そこで単身赴任で定年まで過ごして、彼はそれまでの自分中心主義から変わったという。 もちろん、本質的には変わらないが、見かけ上は変わったと言っていた。 たしかに、あのエゴイストの彼ではなかった。 歳のせいもあるだろう。 ご丁寧にお土産まで持ってきてくれた。 40年数年前のたった4年間。 その4年間の一部分を共有した仲間の一人。 また会おう、と言って去っていった。 やっぱり本質は変わっていない。 |
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