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2023.09.08 Friday
風の果て 藤沢周平
上下2冊の時代小説。
藤沢周平の得意な、お家騒動というか、上層部の派閥争いの小説。 この本は母が中古で買ったものだと思う。 定価は420円だが、裏表紙に鉛筆で300円と書いてあった。 この当時の文庫はだいたい8.5ポイントの字で印刷されている。 今のものは9.25ポイントだそうだ。 今ならもっと分厚くなっていただろう。 ちょっとページが茶色に変色しているが、読み出すと気にならない。 出だしは、主人公の現在から始まる。 そこからすぐ、子供時代に戻り、同じ道場に通う5人組の話になる。 ところどころで、今と過去が入れ子になっている。 なぜわかるかというと、名前が変わるからだ。 5人の中で主人公は正義感の強い、隼太という少年。 江戸時代には次男、三男は婿に出るか、厄介者になるしかなかった。 隼太は婿に出て、藩の要職まで上りつめる。 その縦糸と、5人の仲間がどうなっていくかという横糸がこの物語を作っている。 藤沢周平の筆力はすごい。 まるで江戸時代に武士として仕事をしていたようだ。 それも架空の藩だ。 結局栄華を極めても、ある意味若い頃の夢を捨てて、虚しさが去来する。 もう老境になった身には、染みる小説だった。 |
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