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2023.05.20 Saturday
病気の効用
脊柱菅狭窄症になって、一つ良かったことがある。
病気で歩けない人の気持ちがわかったことだ。 人間にはいくら知識があっても、経験しないとわからないことがある。 坐骨神経が痛い、というのは経験してみないとわからないのだ。 今まではそんな人が世の中にたくさんいる、ということも知らなかった。 脊柱管狭窄症という病気は、高齢になって筋力が落ちてくると起こりやすい。 人間にとって、二足歩行することは首や腰に負担がかかるから、仕方がないのだろう。 街を歩いていても、すごくゆっくり歩いていたり、急に立ち止まったりする高齢者がいる。 今までは、急いでいるのにジャマだなどと思っていたが、この病気になったことでその気持ちがわかった。 早く歩けないとか、痛くて立ち止まらざるを得ないのだ。 母がまだ元気だったころ、動作がのろくなったから、自分の後ろに列ができるのがいやだ、と言っていたのを思い出す。 そういうことが原因で、だんだんと外に出なくなった。 母は病気ではなかったが、自分が世間のお荷物になってしまうのが嫌だったのだ。 ぼくも最近通勤で歩いていて、痛くて立ち止まったり、電車に乗って高齢者席に座るときに思う。 自分は社会のお荷物になっている。 今はまだ仕事をしているが、もう数年して仕事がなくなったときには苦しいだろうなあ。 人生をエンジョイする、などという気持ちになれるだろうか。 昔は平均寿命が短かったから、そんなに高齢化が原因となる病気はなかった。 それが長寿命化に伴って、どんどん増えてきた。 ぼくはもともと若いころに腰を痛めていたから、早くかかったが、高齢化がこの病気の主因であることには違いはない。 手術待ちに3か月かかるというのが通常だという。 いずれ、高齢者は死に絶え、病気の数は減るのだから、むやみに手術を増やす体制を作っても仕方ないのだ。 でも、同じような病気を持つ人に対して、寛容になれたのは病気の効用だ。 高齢者には高齢者の悩みがある。 |
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