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2021.08.13 Friday
自動車のゴール
ぼくは25年間自動車業界の端くれで部品産業に関わってきた。
中でもトヨタと長い付き合いだったが、仕事をしているときはトヨタはあまり好きではなかった。 協力会社さんと共存共栄とか言っているが、結局はトヨタが儲かるようにやっていると思ったからだ。 頂点にいる会社だから、それは仕方がないのだが、ちょっとあくどいこともあった。 でも、自動車業界を離れて十数年、昨今エンジン車への風当たりが強くなって、欧州やカリフォルニアの動きなど見ていると、ちょっとひどいのではないかと思う。 よく欧州の自動車メーカーが文句を言わないなあ、とも思うがハイブリッドなどの技術開発が遅れて、ディーゼルで完敗し、今はその揺り返しが来ているのだろう。 ドイツなど、脱エンジンという方向に進んでいて、それは電池技術のブレイクスルーがないと到底無理という状況なのに、ある種「賭け」に出ているのだろうと思う。 4月にトヨタの社長が会見して、拙速な政策決定をしないでほしい、と訴えた。 言わずとしれたCO2の削減のことだ。 自動車産業の裾野は広く、現在のエンジン車がすべてモーターになったら(資源の問題や価格の問題はおいておく)、エンジンの部品を作っている会社は潰れて失業者が出る。 それは数百万人単位になるだろうということだ。 その是非はともかく、今から軽々しく約束をしてほしくない、ということを訴えた。 それでも、30年代半ばまでにガソリン車の販売を無くす、ということを政府は宣言した。 時代の流れに乗ったということだろう。 一応、電動車という扱いでエンジンを併用するハイブリッドは残るということにはなっているが…。 トヨタの社長が言っているように、自動車産業は100年に一度の変革期。 それは事実だ。 インターネットの発達によって、カーシェアリングやUberというような車の使い方が出てきた。 一家に一台、という車の持ち方は資源の無駄使いとも言える。 ぼくらのような、クルマというものにカリスマ性を感じる世代がいなくなれば、そういう動きはどんどん加速するとも思う。 そうなると、クルマの絶対数が減るから、心配しなくても電池は足りてしまうかもしれない。 実際、今の若い人たちはクルマは中古の軽で十分と思っている人も多いのだ。 とにかく、いろんなシナリオが考えられるのが今の自動車業界。 おそらく、どうなっても今ほどの需要はなくなるだろう。 その危機感がトヨタの社長にはあるのだと思う。 電気かガソリンか、という単純な話ではない。 自動車は今の日本に残された基幹産業。 それを政府が守らないでどうするのか。 製鉄といい、自動車といい、CO2で目の敵にされている。 だいたい、何も作ったこともなく、いい格好をするだけの政治家が多すぎる。 ほんとに情けない。 |
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