考えたこと2

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ジョブ型志向と大学
この50年で学部の数が8倍に増えたという。
「新卒採用もはや制度疲労」という記事にこう書いてあった。

「1966年にわずか63しかなかった学部の種類が、2018年には526へと増えたというのです。 実はこれは、企業の動きに呼応するように、大学も「ジョブ型」を念頭に専門性を意識した教育を打ち出しているということでしょう。」

学部が増えたのは事実だが、「専門性を意識した教育を打ち出している」というのは間違っている。

少なくともぼくが関わった大学の学部改組については、「教員構成で組めるカリキュラム内容から可能な学部名で、どんな名前にしたら志願者が集まるか」ということだけが考慮した点で、「ジョブ型」の雇用を意識した教育など全く考えていない。
そもそも、今も十数年前も文系の求人は「学部学科不問」という求人票しか見たことがない。
そういう意味では、企業はまだまだ文系については、大学で身につけた専門性などちゃんちゃらおかしい、と思っている。

最近になって、経団連が終身雇用制度はもう限界だと言い出して、初めて大学は「ジョブ型」という言葉を知ったというのが、本当のところだろうと思う。
もしも本当に専門性を高めようと思っていたのなら、大学のホームページの「卒業後の進路」に資格に関係ない、専門性をうたったサラリーマンの道も載せるはずだ。
たぶん、どこを探してもそんなページはないと思うが…。

要は下位の文系の大学では、こういう専門性をつけよう、などという授業は資格関係だけであって、サラリーマンの世界でどんな専門性が必要かも考えていないと思う。

ぼくの勤めていた大学には臨床心理があったが、そこでは専門科目というのは、先生方が自分が研究している分野を教えていた。
深層心理とか、夢の分析とか、青年期の心理とかいうものだ。

キャリアをやっている時に、営業では駆け引きが必要だから、そういう時に心理学が役に立つのではないか、と学生に言っても「そんな役には立たん」と一蹴された。
実際、そんなことに役立ちそうな科目名は見当たらない。
そんな分野を研究する先生は皆無。
まあ「臨床」という名前がついているから、難しいとは思うのだが、この記事で筆者が言いたいことはそういうことだろうと思う。

文系の求人はほとんどが営業、販売なのだが、そういうものに役立つものはなかった。
だから、エントリーシートでアピールできない。
企業の方も、研究内容を書かせるのは、「その人がどんなことに興味を持っているか」という程度のことだろう。

もちろん、法、経、経営、商学、社会あたりは企業側も「何を学んだのか」に興味を持つだろうが、それ以外の学部は役に立たないと思っている(と思う)。
また、そういう学部名がこの50年でどんどん増えていったのだ。
だから、この記事の言っていることとは真逆の方向に大学は進んでいるのだと思う。

ぼくが大学にいるとき、一人の先生が「営業学」を教えたい、と言ってキャリアサポートに来た。
この先生は本当に偉い先生で、ぼくは尊敬していたが、結局構想だけで終わってしまった。
定年が近づいていたこともあるし、他の先生の協力が得られなかったりしたのだろう。
本当に残念だった。

その先生は「うちの学生たちは卒業したら、ほとんどが営業の仕事に就く。だから大学にいる間に営業学を教えたい」と言って相談に来たのだ。
自分の専門は政治学だが、この大学に来て(2年目だったと思う)、そういう思いを強く持った。
こういう先生は本当に少ない。
みんな自分のやりたいことを教えようとする。
上位校はそれでいいのだが、下位の大学はそれではいけないのは学生を見ていると明らかだ。
また、そういう授業をすれば、学生は授業にも身が入るのだと思う。
そこから始めないと、大学は変わらない。

「ジョブ型」志向が強まって、文系でも大学で学んだことが実社会でどう役に立つのか、ということが本当に問われるようになってほしい。

そうしないと、今の硬直化した大学は変われないと思う。


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