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2020.01.30 Thursday
大学の勘違い
経団連が就職に関する倫理憲章を止めることになった。
企業はインターンシップをどんどん増やし、就活の時期が早まってきた。 それを憂いて、このままでは大学の4年間が就職活動になってしまう、という意見も一部の大学から出始めた。 大学の言うことは正しいが、同時に根本的に大きく間違っている。 本来は大学で身につけるべき能力が、ある程度企業内で生かされることになっているはず。 しかし、ほとんどの文系の求人は「全学部全学科」が対象。 つまり、企業は大学で習得することの専門性に頓着していないということだ。 それが根本的な問題だと思う。 今の大学(特に中位以下)に入ってくる学生は、多かれ少なかれ自分が学んだことを生かして仕事ができる、と思っている。 なぜなら、高校の進路指導で、将来のことを考えて大学選び、学部選びをしなさい、と指導されるからだ。 さらに、大学のホームページを見ると、将来なれる職業というような宣伝がある。 法学部なら弁護士とか、司法書士とか書いてある。 間違っても、「サラリーマン」とは書いてない。 実際には大半がサラリーマンになることはわかっているのに、罪深いことだ。 難易度の説明などなく、夢と希望に溢れて受験生をひきつけるのだ。 そういう指導をされて、大学に入ってくるのだから、学部の専門性は就職に役立つと思うだろう。 そんなナイーブな高校生は少ない、という人もいるかもしれないが、ぼくは実際に専門の勉強などしても仕方がない、と言っている学生を何人も見た。 まだ法学部や経済学部、経営学部、商学部など伝統的な学部なら、学んだことを就活の場で話せるだろう。 しかし、それら以外の学部は難しい。 去年から流行っている国際ナントカ学部など、「いろんな国の人の文化を知ってコミュニケーションができます」などと言っても、企業はそんな宣伝よりもTOEICのスコアと留学経験を信じるのだから。 学生に大学にコミットしてもらいたいのなら、専門課程のカリキュラムを変える必要がある。 経済学部なら難しい理論の代わりに、「企業の管理会計の方法」や「簿記」を教えるとか、法学部なら六法の代わりに「企業活動と法律」や「営業で知っておくべき法律」というような授業を作るとか…。 要するに、旧態依然とした授業をやめ、(特に中下位の大学では)企業に入って役に立つものを教える授業に変えることだ。 いくら就活に一生懸命でも、就職に役立つと思えば学校に来るのは当然。 バイト三昧の学生も減るだろう。 アルバイトにふけるのも、授業よりバイト経験の方が役に立つと思っているからだ。 これはぶっちゃけて言えば普通の大学から「専門職大学」になるということだ。 中下位の文系大学の多くは、本来専門職大学になるべきなのだ。 それに伴って、大幅な教員の入れ替えも必要になるだろうが、それは仕方がない。 現在、経団連が「日本型雇用」の限界を感じて、「ジョブ型」の採用を検討している。 そうしないと、優秀な若者が外資に行ってしまう。 年齢を重ねれば、何もしなくても給料が増える、というシステムでは世界と戦っていけない。 同時に、会社に縛られず、どんどん会社を変われる体制も必要とされている。 流動性を確保できないから、一つの会社で働き続けざるを得ない。 だから、会社の命令を拒否できない、というような働き方はもう止めないといけない。 10年後そういう社会ができていることを望む。 |
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