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2019.09.04 Wednesday
ネコたちをめぐる世界
ネコたちをめぐる世界 日高敏隆 小学館
実家から持って帰ってきて読んだ。 日高敏隆は有名な動物行動学者。 残念ながら2009年に亡くなっていた。 2005年に「春の数え方」というエッセイ集を読んだ。 それ以外にも何冊かは読んだと思う。 この本は日高家で飼われたネコたちを観察した記録。 と言っても、雑誌に連載されていたもので、観察記録というよりは読み物になっている。 作者はネコ派で、奥さんもネコ好き。 だから、京都の家に1匹のネコをもらってきて、自由にさせていると、どんどん増えた。 ネコのオスメスの違い、家で飼われているネコの特徴、ネコの家族の振る舞いや家出などが書かれている。 家に何匹もネコがいて、ネコ用の扉を作って出入り自由にしていると、外からオスネコが入ってきて、家のオスと縄張り争いをする。 動物は尿でマーキングをするので、大事に尿を貯めるらしい。 そして、縄張りを示すときには、特別な腺から特に臭い液が出る。 何度も家の中で騒動が起こり、家中にネコの匂いが漂って「大変だった」という。 普通の人なら、我慢できずに家の出入りをやめるだろうが、さすが動物学者だけあって、それでもネコの自由を奪わない。 これには感心した。 と同時に、こういう人が近所にいると、周りの家も大変だろうと思う。 あとがきでお詫びはしているが…。 イヌとネコはどちらも人間と仲良しだが、ネット上では圧倒的にネコが多いと思う。 なぜだかわからない。 人数的には拮抗しているはず。 でもまあ、ネコの方が人間を考えさせるのはわかる。 イヌは人間を主人だと思っているが、ネコは同類だと思っているとどこかに書いてあった。 作者は動物学者だけあって、ネコを見る目は鋭い。 どのネコがどういう性格というのも、よく見抜いている。 人間にもいろんな性格があるように、ネコにも臆病なのやあけっぴろげなのがいる。 そういうネコたちと生活するのは、大変だが面白いとも思う。 この人は有名な「ソロモンの指輪」という動物行動学者のローレンツ(ノーベル賞をとった)の本を訳している。 その経緯も書かれていて、興味深い。 ネコがどう世界を見ているのかという実験の話などもあり、ネコ観が養われる。 1989年初版だが、こういう本は古くならない。 また、この本を読んでいると、人間同士が争っているのが バカバカしく思える。 アマゾンで見たが、この本はもう絶版。 それでも中古で流通しているのがありがたい。 ネコが好きなら、読んで損はないと思う。 |
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