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2014.09.15 Monday
やがて哀しき外国語 村上春樹
やがて哀しき外国語 村上春樹 講談社文庫
「やがて哀しき外国語」という本をアマゾンで中古で買って読んだ。 村上春樹は今まで読んだことがなかったが、今回初めて読んで、なかなか面白かった。 ただし、これはエッセイ集。 尊敬する先生から、この本の中の「大学村スノビズムの興亡」というのを読めば、海外の大学の雰囲気がわかる、ということで推薦された。 この本は村上春樹がプリンストン大学に滞在していた期間、アメリカやプリンストンについて書いたエッセイ。 期間は91年の初めから2年半。 アメリカに来る前はヨーロッパにも住んでいたことがあると書いてある。 Wikipediaで調べてみると、高校の8年先輩だった。 現在65歳とのこと。もっと若いのかと思っていた。 ぼくはどうも自分より若い作家の小説を読む気がしなくて、村上春樹は敬遠していたのだが、だいぶ年上だった。 たぶん、作品の名前とか雰囲気が自分より年下だと思わせたのだろう。 大きな勘違いだった。 このエッセイを読むと、この人は大学を出てジャズバーをやっていた時期があったとわかる。 当然、ジャズにも詳しい。 映画の脚本が書きたかったということもわかった。 この時代、大学に長いこといて、好きなことをするのはよくある話だった。 特に文学好きな人はそういう人が多い。 外国に住むということは、ストレスフルなことであろうと思う。 言葉の問題もあるし、文化の問題、習慣の問題など、いろいろなことがツーカーではいかない。 いちいち意味を考えたり、役割を考えたりしないといけない。 でも、この人はプリンストンの前にイタリアやギリシアに住んでいたということなので、だいぶ耐性ができていたのだろう。 それと、英語も得意だったのだと思う。 フィッツジェラルドやレイモンド・チャンドラーの翻訳などをやっているのは、ぼくも知っていた。 海外に住むと、いろんなことでフラストレーションがあるから、エッセイとしては長いものを書けるのだろうと思う。 だいたい、一つの作品が文庫本で12ページくらいある。 このエッセイを読むと、作者は市民ランナーでもあり、ジャズフリークでもあり、車好きでもあり、映画好きでもあるという多才な人である、ということがわかる。 そうした自分の趣味を通じて、異国に住んでいてわかる体験などを書いている。 「大学村スノビズムの興亡」を読むと、アメリカの有名大学の教授たちのコミュニティがどんなふうになっているのかがわかる。 教授たちはそれなりにエライ人ばかりなのだろうが、「プリンストンではこういうふうに言う」とか、暗黙のルールがある。 飲むビールの銘柄も、これがいい、というものがあるらしい。 地元のビールではなく、海外のビールを飲むと「正しい」ということらしい。 それもこれも、大学というところはある種「特別なところ」ということを彼らは言っているのだと思う。 「そこには何かがある」と入学者に対して思わせる、よく言うと「夢」がないとイケナイんだろう。 それが、大学の内部ではそういう特殊性を持つことになるのだと思う。 村上春樹という人がちょっと身近になった。 もうちょっと読んでみようかなと思う。 |
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