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2014.08.21 Thursday
大学のガバナンス2
宮内義彦オリックスシニアチェアマンが日経電子版にブログを書いている。
今年の6月の改正学校教育法と改正国立大学法人法のことだ。 経営者の立場で大学に関わってきて、ガバナンスの不在に驚き、これらの改正法が大事だという記事。 改正学校教育法では、以前書いたが、教授会の役割を大幅に縮小し「学長に意見を述べる」という役割に制限した。 また、国立大学法人法では、外部委員の意見を大きくするため、「経営協議会」における外部委員の数が1/2以上から過半数に変更され、学長の選考基準や結果の公表も義務付けられる。 しごく真っ当な意見だと思う。 大学の自由が守られないというような論調もあったし、大学内部に批判もあるようだが、それに対してはこう書いている。 「一部の先生からは「学長の権限が強くなりすぎて独裁につながる」との反発がでているようですが、先生方が変化を嫌い、教授会を通じて様々な改革提言を潰してきた実態を直視する必要があります。権限集中の弊害を指摘するのであれば、それは教授会にこそ当てはまるはずです。」 実務を知っている人の意見。 一部の大学の先生方は、自分たちのことしか考えられないのだろう。 自分の意見が反映されないからダメだ、というのはコドモの言うこと。 大学という組織を考えれば、自由自由と言っていられないのはアタリマエのことだと思う。 そしてこうも書く。 「先生方は「財務などの経営は理事会にお願いしますが、教学、つまり大学の運営は我々に任せてほしい」と言います。が、そもそも経営と教学を分離するという考えに無理があるのです。こんなすばらしい教育をしたい。そのために良い先生を集めたい。学部、学科の新設や研究設備の増強にも取り組みたい。そのためには資金の裏付けも含めてどのような経営戦略をとるべきか――。このように教学と経営は一体なのです。よりよい教学の為の経営なのです。理事会で経営方針を決め、学長が中心となって執行する。大学改革を実行するためには、こうしたシンプルなガバナンスが必要で、今回の法改正がそれに道筋をつけるはずです。」 思わず拍手をしたくなる。 いくらこんな風に考えても、それが出来なかったのが現実。 それを痛いほど宮内氏も経験したのだろう。 これで国立大学はマトモなガバナンス体制ができると思う。 少なくとも、そのための法整備はできたということだ。 これからの国立大学を見守りたい。 しかし、私学の方はまだまだほったらかしである。 一部の私学は国立よりも進んでいる部分があるが、大多数はまだまだだ。 入学式をタレントにプロデュースさせるというような改革は論外だが…。 たしかに、人さえ集まりゃ食っていけるのは事実だが、肝心の教育の部分がマトモでなければどうしようもない。 どんどん国立に対して遅れていくのだろう。 しかし、これは「大学」なのだ。 昔は最高学府と言われ、教養のある人達が集まっている場所だと思ってきたところだ。 それが今や管理体制を問われる時代。 宮内氏もこう言っている。 「私が少し残念に思うのは、結局は官主導、政府主導で改革が動き出すという事実です。改革の必要性は分かっているはずなのに、大学関係者は最後まで自分から動こうとしなかった。私が理事長を仰せつかっている私立大学の経営のあり方を考える会、「21世紀大学経営協会」の年次総会が7月1日にありまして、文科省の下村大臣と大学振興課課長に講演をお願いしたのですが、その際の質疑応答で、ある大学の学長さんがこんな質問をされました。「改革をしなかったら、何か罰則があるのですか」――。 あまりに正直な質問で、苦笑いするしかありませんでした。民間といいますか、在野の力を信じている者にとっては、実につらい現実です。」 結局外圧がかからないと、大学は何もしない。 自己点検にしても、同じことだ。 そのくせ、入試の科目を減らして受験生が増えたとなると、すぐに右に倣えをする。 どこに良識があるのだろうか。 この「改革をしなかったら、何か罰則があるのですか」という質問をした私立大学の学長は、何の悪気もなかったと思う。 単に「やりたくない」という意識だけなのだ。 宮内氏は改革の必要性はわかっているはず、と好意的に書いているが、本当にわかっていない人たちの方が多いと思う。 その学長は「私たちは一生懸命やっているのだ。何で変えないといけないのか。」と思ったのだろう。 そこに根本的なくいちがいがある。 一生懸命やっていても、ダメなものはダメなのだ。 出来ないからやらない、というリクツが通るところが大学。 そんなことで、どうやって理想に近づくことができるのか。 文部科学省もいろんな事例を見て、もういい加減に動かないとダメだと思ったに違いない。 それにしてもなあ。 「罰則があるのですか」と言われたら、苦笑いするしかなかっただろうなあ。 宮内シニアチェアマン、ご苦労さまです。 |
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