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2018.12.16 Sunday
ピアスとサンダル
真珠のピアス、というユーミンの歌がある。
レコードも持っているが、この曲はそんなに気に留めていなかった。 でも最近になって、じっくり聞いてみると、けっこう重い。 彼女の歌詞は、ドロドロした感情もさらりと歌うという感じがあるのだが、これは例外だ。 「最後の夜に、彼のベッドの下に真珠のピアスを捨てた」という歌だ。 なんで捨てたかというと、もうすぐ彼女と引っ越しするときに、ベッドの下から見つかって、私のジェラシーに気づくはず、という。 引っ越しのときに「なんでこんなものが落ちているの」という「彼女」の声が聞こえているのだ。 そして、「どこかで半分なくしたら役には立たないものがある」と歌う。 パールのピアスだから、高価なものだろう。 それを最後の夜にわざと落としていく。 もうそれは使うことができない。 ピアスを犠牲にしても、私はジェラシーを伝えたかったということだ。 1982年のリリース。 ユーミンが28歳の時だ。 この時代の結婚適齢期と言われていたのは、けっこう若い。 ということは、28歳というのは適齢期を過ぎたという感じだろうと思う。 その時期の失恋は、女性にとって重かった。 そういうことも、読み取れる。 一方、同じ失恋でもデスティニーでは「冷たくされていつかは みかえすつもりだった」という。 ふられただけで、彼女は出てこない。 この曲は79年だから、25歳の時だ。 まだ若いから余裕がある、という感じかな。 この辺の若いという感覚は、同時代を生きていないとわからないだろう。 「それからどこへ行くにも 着飾ってたのに どうしてなの 今日にかぎって 安いサンダルをはいてた」 ユーミンは靴フェチかもしれない。 安いサンダルは、他の曲の歌詞でも出てくる。 きっと実際にあったのだろう。 ピアスに比べると、まだ軽いと思える。 ユーミンはこないだ第66回の菊池寛賞をもらった。 そこでのスピーチ内容は、 「音楽は時間をデザインするもの。そう遠くない未来に私が死んで私の名前が消し去られても、私の歌が詠み人知らずとして残っていくことが望み」 と言った。 遅ればせながら、受賞おめでとうございます。 |
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